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校長講話等

前期終業式 校長講話(令和5年9月29日)

 皆さん、おはようございます(こんばんは)。

 今日は、生活体験作文で本校代表となった皆さんへの表彰がありました。今月初めの全校集会でも多くの表彰がありましたが、さまざまなことで羽生高校の生徒の皆さんが頑張っているのは、本当に素晴らしいことです。また、生徒会の皆さんをはじめ、各クラスや部活動、有志の皆さんが、勾玉祭に向けて、それぞれの企画に取り組んでいます。そうした皆さんの姿を見ることができるのも、とても嬉しいことです。

 さて、本校は2学期制ですから、今日で前期が終わります。通知表が渡されます。結果が良かった人も、思うような成績が取れなかった人も、その原因を考えてみてください。成績の数字だけ見て終わりにしないでください。振り返って、なぜ良かったのか、なぜ悪かったのか、考えてください。

 人間は完璧ではありませんから、うまくいかないことは誰にでも山ほどあります。うまくいかなかったとき、何が悪かったのか、どこに問題があったのか、どうすればよかったのか、それを考えた人は、次に同じ間違いをしません。逆に、うまくいったときに何が良かったのかを考えなかった人は、次に同じようなことに取り組んだとき、成功する率は5分5分になるでしょう。

 前にも話したことがありますが、人間が何かを成功させようとするときの一番の近道は、良いところを伸ばすことと悪いところを直すことです。しかし、ものごとによっては、失敗をしないと、どこが悪いのかがわかりません。

 そう考えると、人間が何かを成功させるためには、ときには、失敗を経験しないといけないのかもしれません。「失敗は成功の母」という言葉がありますが、それどころではないですね。失敗は、成功の必要条件とさえ言えるでしょう。

 だから、皆さん。失敗したことで自分を責めなくていいんです。それよりも、なぜ失敗したのか、ちゃんと考えることの方がずっと大切です。取り返しのつかない間違いは、そうはありません。失敗の経験の多くは、次にうまくやるためのヒントをもらったようなものです。同じ失敗を繰り返さないよう、色々なことを、ちゃんと考えましょう。それは、失敗を成功に変えることにつながります。

 ただ、人間は、死んでしまうと失敗を成功につなげるチャンスを失ってしまいます。だからこそ、いのちは何より大切なのです。

 私が、こういう機会があるたびに「いのち」と「時間」と「決まり」の三つを大切にしてくださいと呼びかけている背景には、そんな理由もあります。限られた時間は、限られたいのちということですし、ルールやマナーやエチケットは、お互いのいのちを尊重するための仕組みのひとつです。どうか大切にしてください。

 そして、大切にするというのは、よく考えるということでもあります。どうぞ、よく考えてください。

 しかし、自分ひとりで考えていても、あるいは自分のことだけ考えていても、考えが狭いままになってしまいます。自分にできることで誰かを助けたり、誰かを手伝ったりすることで、自分の世界が広がります。自分の考えが広がります。試してみてください。

 誰かを助けたり手伝ったりするのが難しいなあ、という人は、出会った人に挨拶をしてみましょう。そうすると、ほんの少しだけ、挨拶した相手のことを考えられるようになります。

 自分の考えだけでは足りないときのために、友だちがいます。本があります。先生方がいます。ほかの大人たちがいます。困ったときは誰かに相談しましょう。助けを求めましょう。考えが広がり、考えが深くなります。考えの幅を広げてから、また考えてみましょう。

 終業式は、ひとつの節目です。何かを考えるきっかけにするには、良いかもしれません。何かを考えた人は、考えた分だけ少し成長します。何かをきちんと考えると、考えた分だけ、今年度の後半が良い日々になると思います。どうぞ、考えを深める時間を作ってください。

夏季休業明けの全校集会 校長講話(令和5年9月1日)

 改めまして、皆さん、おはようございます(こんばんは)。皆さんの元気な姿を見ることができて、たいへん嬉しく思っています。

 私はいつも、こういう機会に、「いのち」と「時間」と「決まり」の3つを大切にしてくださいということを、繰り返し話しています。

 さきほど、全国大会で活躍したソフトテニス部の皆さんの表彰や、書道部の皆さんの表彰が紹介されました。また、基礎学力向上補習の皆勤賞の表彰もありました。そして、表彰されてはいませんが、剣道部で全国大会の運営の役員を務めた人や、暑い中、毎日のように勾玉祭の準備に取り組んでいた生徒会の皆さんもいます。みんな、この夏休み中に自分の命をより良く使い、自分の命を成長させることができた人たちです。

 私は、いつのまにか今年60歳になりましたが、今、幸せを感じることのひとつは、若い人が成長する姿を見ることです。皆さんが自分の命を大切にして、自分の命の力を伸ばしていくのを見られるのは、私にとっても、また、ほかの大人にとっても、素敵なことだと思います。

 夏休み前の全校集会で、私は「ひとりの努力が、多くの人を幸せにすることがある」という話をしましたが、皆さんが目の前のことに一生懸命頑張っている姿は、皆さんが自分で感じているよりも、おそらく、ずっと素敵なものだと私は思っています。その努力自体が、今という時間を大切にすることにつながっています。

 話は変わりますが、今日は皆さんに「シェイクアウト訓練」をやってもらいました。(このあと、やってもらいます。)今日は、関東大震災からちょうど100年目にあたります。私の祖父は、そのとき教員をやっていたのですが、子どもたちと一緒に教室の窓から外に出て、近くの竹藪に逃げたという思い出を語ったことがありました。まわりの皆が無事でよかったと思ったそうですが、そのころ、関東を中心に多くの犠牲者が出ていたのも事実です。たくさんの命が失われた悲しい事実から、私たちは多くのことを学び、生かしていかなければなりません。これも、命を大切にすることのひとつです。

 長い休みは終わりましたが、これからの生活も、「いのち」と「時間」と「決まり」の3つを大切にして過ごしてほしいと願っています。

 さて、もう一つ。夏休み前の全校集会で、私は「この夏休みに、誰かを助けるような手伝いをしましょう。そしてまた、読書をしましょう。」と皆さんに呼びかけました。

 どうでしたか?どんな小さなことでも、誰かの助けになるようなことができましたか? 逆に、本当に困ったときに、きちんと誰かに「助けて」ということができましたか?どちらも大事なことです。

 今、生きている人でなくても、ずっと昔の人が書いた本の中にある言葉が、自分の心を救ってくれることがあります。そんな本を読むことができたらいいですね。夏休みは終わりましたが、ひとりでも多くの人に良い本との出会いがあるよう、願っています。

 それでは、今日からまた始まる学校での日々が、皆さんにとって良いものであるよう祈りつつ、校長講話といたします。

夏季休業直前の全校集会 校長講話(令和5年7月27日)

 改めまして、皆さん、おはようございます(こんばんは)。

 先ほど(今朝、昼間部の全校集会で)、ソフトテニス部の皆さんに対する壮行会がありました。その前にあった表彰では、硬筆展関連で3名の生徒の皆さんが表彰を受けました。

 一昨年は、ソフトテニス部、陸上部、剣道部の選手の皆さんが全国大会で活躍しました。昨年度は、美術部や書道部の皆さんが、それぞれ素晴らしい賞をいただきました。

 羽生高校の素晴らしいところは、運動部・文化部の区別なく、いろいろな分野で頑張る人が現れること。そして、そういう頑張る人を指導して、一緒に成長することを実現させてくれる先生方がいらっしゃることだと、私は考えています。

 また、生徒会活動や各種委員会活動などもそうですが、対外試合などのない部活動やボランティア活動のような「勝ち負けや順位などに関係のないところ」でも一所懸命頑張って、自分の力を尽くしている生徒の皆さんがいます。これが羽生高校の雰囲気を良くしてくれている大きな理由のひとつだと、私は思っています。

 このように、ひとりの頑張りが、周りの皆を、いつのまにか幸せにしてくれることがあります。

 

 さて、皆さんにこういう場面で話をするとき、私はいつも、「いのち」と「時間」と「決まり」を大切にしてほしい、ということを言っています。

 まず、最も大切な、一人ひとりの「いのち」について話します。

 勉強でも運動でも趣味でも、何かを通じて自分を成長させることは、皆さん自身の「いのち」をより良く使うことになります。しかし、成長した自分がどのように変化するかは、前もってわかることではありません。成長したら何をどう感じるようになるのかも、誰にもわかりません。だから、価値がわからないことや、どうなるかわからないことを、無駄だと決めつけたり、努力する人を馬鹿にしたりしては、絶対にいけないのです。どうか、これからどのように成長するかわからない自分の「いのち」も、他人の「いのち」も、両方とも大切にしてください。

 また、同じように、高校生として過ごしている、限られた「時間」を大切にしてください。その大切な時間は、自分をより良く成長させるために使ってほしいと思います。

 そして、「決まり」を大切にしてください。いつも言うように、ルールやマナーなど、すべての決まりごとには、それが決められた理由があります。決まりを破ることは、決して格好いいことではありません。決まりを破ることは、誰かを傷つけることや、自分が傷つくことにつながります。決まりを大切にして、考えて行動するようにしましょう。

 

 最後に、毎年言っていますが、夏休みにしてほしいことについて話します。

 家の手伝いでも何でも、どんな小さなことでもいいのです。誰かを助けるような、良いことをしましょう。そして、もう一つ。本を読みましょう。

 3年ほど前に出た本でしたか、「ぼく モグラ キツネ 馬」という題名の絵本があります。男の子が、馬やキツネやモグラと会話しながら旅をするお話ですが、そのやりとりの中で、男の子の質問に対して、馬が答える場面があります。

 「 “いままでにあなたがいったなかで、いちばんゆうかんなことばは?”

  ぼくがたずねると、馬はこたえた。

   “たすけて” 」

 馬は、一番勇敢なのは、「たすけて」という言葉だと答えます。そして、次のようにも言うのです。

 「たすけをもとめることは、あきらめるのとはちがう」

 「あきらめないために、そうするんだ」

と続けます。

 皆さん。あなたが誰かをたすけることが、こういうことにつながるのだと考えると、素敵だとは思いませんか。そして、こういう言葉との出会いが、読書にはあります。

 

 今日は、「ひとりの努力が、多くの人を幸せにすることがある」という話と、「いのちと時間と決まりの3つを大切にしてほしい」という話と、「長い休みのうちに、誰かを助けるような手伝いをしましょう。そしてまた、読書をしましょう。」という話、この3つについて、お話しをしました。

 9月1日に、また、皆さんの元気な顔を見られることを、楽しみにしています。

ソフトテニス部全国大会出場に向けての壮行会「激励の言葉」(令和5年7月27日)

 全国大会に出場する選手の皆さん、おめでとうございます。また、先ほどは、部活動を代表しての立派な挨拶を、ありがとうございました。全国大会では、自分たちの力を十分に発揮し、大きな舞台での体験を楽しんできてもらいたいと思います。

 この素晴らしい成果は、選手の皆さん一人ひとりの努力と先生方の御指導によるものです。しかし、先ほど選手自身の挨拶の中にあった言葉のように、多くの人の支えや助けもあったことでしょう。

 本校には、色々な部活動や、生徒会活動などで頑張っている人が、たくさんいます。そうした多くの生徒の皆さんの代表として全国大会に出場する皆さんです。羽生高校の名前を背負って、本校の皆さんの応援を感じてもらえればありがたいと思っています。

 全国大会が、選手の皆さんにとって良い思い出になる、幸せな3日間となるよう、御活躍を祈っています。

修学旅行直前指導 引率責任者挨拶(令和5年6月6日) 

 皆さん、こんにちは。

 良い挨拶が返ってきて、気持ちがいいです。皆さんの素晴らしいところですね。

 いよいよ、明日から修学旅行です。皆さんの心も期待に満ちているのではないかと思います。気持ちが浮ついてしまっているかな、と、少し心配していましたが、今の落ち着いた様子を見て安心しました。こういうときに静かに集中して話を聞くことができるのは、皆さんの、もう一つの素晴らしいところです。

 さて、時間を少しいただいて、旅に関係するお話をします。

 今は令和5年ですが、令和という元号のもとになった、梅の花をお題にして歌を詠む宴を開いたのは、奈良時代の大伴旅人という人です。奈良の都から、遠く北九州の太宰府というところの長官を任されて働いていましたが、そこで、愛する妻が亡くなってしまいます。その悲しみをテーマにした多くの歌があるのですが、それと一緒に、山上憶良という人が、悲しみに沈む大伴旅人のそばで、旅人のつらい心を代わりに歌にしてあげた作品が残っています。その歌を紹介します。

 「くやしかも かくしらませば あをによし くぬちことごと みせましものを」

 (悔しいなあ。こんなことになるとわかっていたら、妻と一緒に旅をして、国中ことごとく全部見せてあげたのに。死んだ今となっては、何もしてあげることができない。悔しいなあ。)

 というような意味です。

 「悔しかも 斯く知らませば 青丹良し 国内ことごと 見せましものを」

 奈良時代は、便利な乗り物もないし、綺麗なホテルもありません。今の私たちには想像もできないほど、旅はつらいものだったはずです。しかし、それでもやはり、愛する人を色々なところに連れて行って、素敵なものをたくさん見せてあげたかったなあ、と思う心は、今の私たちと変わらないと、私は思います。

 旅というものを通じて、今まで知らなかったものを知る。初めてのものを見たり、聞いたり、食べたり、話したり、触れたりする。それは、大きな喜びです。

 旅の中で、友達の、今まで知らなかった意外な一面を知ったり、今まであまり仲良くなかった人の、とても素敵なところを発見したりする。これも、大きな楽しみです。

 今の世の中は、テレビやインターネットなどを通じて「わかったつもり」になってしまうことが多いのですが、かえって、そんな世の中だからこそ、実際にそこに行くことや、その人に会うこと、本物を見ることは、素晴らしく貴重な体験になります。

 皆さんにとって、明日からの修学旅行が、そうした貴重な体験になることを願っています。

 そして、帰ってきてから、その貴重な体験を振り返って、自分なりに考えてみることによって、自分を成長させたり、その体験を今後の人生に生かしたりすることができるものにしてもらえたらいいなあ、と、願っています。

 その願いを皆さんへのメッセージとして、挨拶といたします。

第53回入学式 式辞(令和5年4月10日)

 今年は例年よりも早く、さまざまな花が咲いています。羽生市の花である藤も、美しい紫色の房を、そこここで見かけるようになりました。このような佳き日に令和5年度埼玉県立羽生高等学校第53回入学式を挙行できますことを、校長として心から嬉しく思います。ここにお集まりの皆様をはじめ、御尽力いただいたすべての方々に、心からの感謝を申し上げます。

 さて、先ほど呼名された70名に入学を許可いたしました。新入生の皆さん、入学おめでとうございます。義務教育と違って、自分の意思で高校への進学を選び入試に挑戦した結果、皆さんはここにいます。不安や迷いを乗り越えた自分に誇りを持ってください。これからは、羽生高校の生徒として一緒に学んでいきます。私たちは、皆さんを歓迎します。皆さんのこれからの努力を、応援します。

 また、新入生の皆さんを育て、支えてくださった保護者の皆様、おめでとうございます。そして、この場にはいない、新入生を今まで見守り、助け、応援してきてくださった多くの方々にも、心よりお祝いを申し上げます。

 本校は今年で創立76年目を迎えます。多くの卒業生が、ここで学んだことや体験したことを生かして、社会のあらゆる分野で活躍し、世の中を支えています。在学中の先輩の中にも、さまざまな困難を乗り越えて、ここで素晴らしい高校生活を送っている人が大勢います。新入生の皆さんも、羽生高校での学習と生活を、自分の成長のために生かしていってください。

 それでは皆さんに、これから大切にしてもらいたいもの、守ってもらいたいものについて、3つお話をします。

 一つ目は、いのち。人の命です。皆さんも、私も、大切な「命」を持っています。どんな人にも、命はひとつしかありません。平等です。この最も大切な宝は、何があっても守らなければなりません。自分の命を大事にする、ということは、自分の人生を大切にして、自分を成長させるということです。自分の命をより良く使うということにつながります。

 そして、他人の命も大事にしてください。誰かをいじめたり、誰かが頑張って成長しようとしているのを邪魔したり、何かに真剣に取り組んでいる人をからかったりするのは、他人の命を粗末にすることです。そんな人は、自分自身のことも大切にはできません。命の価値は平等ですから、どうか、自分の命も他人の命も大切にしてください。

 さて、大切にしてもらいたい二つ目のものは、時間です。どんなに立派な人の時間も、そうでない人の時間も、同じように過ぎていきます。その、誰にでも平等に与えられた時間を大切にしてください。授業でも部活動でもいい、そのときに取り組んでいる、目の前のやるべきことを大切にすることが、時間を大切にすることにつながります。

 三つ目は、決まりです。決まりごとを大切にしてください。すべての決まりには、必ず理由があります。その決まりを守ると便利になったり、得をしたりします。あるいは、その決まりを守ると誰かを傷つけずに済んだり、自分が傷つかずに済んだりします。

 若い頃には、決まりを破ることが格好良く見えてしまうことがあります。しかし、それは錯覚です。なぜ、その決まりがあるのか、理由を考えるようにしてください。もしも、その決まりがあるため、かえって不便な人や傷つく人を増やしてしまっているのなら、正しい手続きで決まりを変えましょう。決まりを破ったり壊したりする力ではなくて、誰かと協力してもっと良い決まりをつくる力、決まりをより良く変える力を手に入れましょう。そんな力を養いましょう。

 命と、時間と、決まりを大切にしてください。これが、守ってほしい3つのことです。

 さて、保護者の皆様。本校は単位制という、生徒一人ひとりの希望や生活のリズムに合わせることのできる柔軟な教育システムをとっています。しかし、これは大きな自由がある反面、大きな責任を自分自身で負わなければならないシステムでもあります。卒業するためには、自分自身をしっかり管理できることが必要です。保護者の皆様、どうか、本校の教育方針について御理解いただき、お子様の健やかな成長と卒業を実現するために、学校と連携しながらの御協力を賜りますよう、お願いいたします。我々教職員も、全力で生徒の皆さんの努力を支援いたします。

 最後に、入学生の皆さん、どうか、保護者の皆様をはじめとする、皆さんが高校で学ぶことができるように道を拓いてくれた人達に感謝の気持ちを持てるようになってください。そして、今度は皆さんが、どんな小さなことでも良いですから、誰かのために道を拓いてあげられるような力を、この羽生高校で身につけて卒業してください。皆さんが実りある高校生活を送り、大きく成長することを祈念し、式辞といたします。

令和5年度前期始業式 校長講話(令和5年4月10日)

 皆さん、おはようございます(こんばんは)。本校の校長として3年目を迎えます。皆さんと一緒に過ごせること、皆さんの成長する姿を見られることを、たいへん嬉しく思っています。

 令和5年度が始まりました。始まりの日に1年後のことを考えるのは変だなあと思う人もいるかもしれませんが、皆さん、ちょっと、1年後の自分のことを想像してみてください。こうなればいいなあという、自分の姿を思い浮かべてください。皆さんはどんなふうに成長していますか?

 今、皆さんが思い浮かべた「成長した自分の姿」に近づくため、ぜひ、何か目標を立ててください。そして、目標を立てるだけではなく、目標に近づくために、何をすればいいかを、考えてみてください。そして、それを実行するための方法についても、工夫してみてください。

 とてつもなくすごいこと、夢みたいな大きいことを実現した人たちは、皆、とてもささやかなことや、たいへん小さなことを、少しずつでも、ずうっと積み上げてきた人ばかりです。

 お店で買い物をするわけではありませんから、これだけ努力したから、努力した分だけ必ず成功する、ということはありません。しかし、成功した人は皆、努力をしています。成功するために、具体的な行動をしています。そして、努力したら成功があると約束することはできませんが、これだけは約束できます。人は、努力した分だけ成長します。

  学校は、わからなかったことが、わかるようになる場所です。できなかったことが、できるようになる場所です。今までつながっていなかった人や知識や物事が、つながるようになる場所です。だから、今は、わからなくてもいい。できなくてもいい。それは恥ずかしいことではありません。もちろん、間違ってもいい。しかし、わからないままで平気でいるのは、できないままで平気でいるのは、恥ずかしいことです。同じように、何かを間違ったままにしておくのも、いけません。

 皆さんが小さい頃、ディズニーの映画で「ありのままの」という歌が流行りましたね。ありのままの自分でいられるのは素晴らしいことですが、それは、決して「今のままの自分でいい」ということではないと思います。 

 さて、私はこういう集会で、いつも「いのちと、時間と、きまりを、大切にしましょう」と呼びかけています。今年度も変わりません。「なりたい自分になる」という目標を実現することは、自分自身のいのちを成長させることです。校訓にあるように「自立」し「飛翔」するということは、目標を実現するために時間を大切にして取り組み、自分のいのちを成長させ、輝かせることにつながります。

 また、頑張る自分を助け、励まし、支えてくれるのが、人と人とのつながりです。それが校訓にある「友愛」です。人と人とのつながりですから、ルールやマナーなどのきまりごとが大切になってきます。また、人間は他人から助けてもらうだけ、励ましてもらうだけ、支えてもらうだけでは満足しません。皆さんには、お互いに助け合ったり、励まし合ったり、支え合ったりできるような力を身につけてほしいと思います。そのためにも、この1年間の目標を立てて、いのちと、時間と、きまりを大切にして、生活してほしいと願っています。

 今日の午後、新入生が入学してきます(きました)。皆さんが良い先輩として成長する姿を、後輩たちにも見せてあげてほしい。そう思っています。以上、始業式における校長講話といたします。

後期終業式 校長講話(令和5年3月22日)

 皆さん、おはようございます(こんばんは)。

 後期の終業式を迎えました。昨年のこの場でも言いましたが、皆さんにとってのこの1年が、どんな小さなことでもいい、自分が成長したと思えるような、何らかの努力が実を結んだと思えるようなものであることを祈っています。

 3月10日に行われた卒業式には、数年ぶりに在校生の皆さんにも参加してもらいました。「国歌」「校歌」「旅立ちの日に」などを自分たちの声で歌って、卒業生を送り出すことができました。たいへん嬉しく思います。卒業生の皆さんは、きっと、羽生高校での日々によって成長した自分自身に、しっかりとした手応えを感じつつ、巣立って行ってくれたことと思います。

 さて、生徒会の皆さんが作ってくれた「翔」という冊子があります。皆さんに配られるものですが、この中に、私の思いも書かせてもらいました。読んでもらえるとありがたいです。そこにも少し書きましたが、学校は、「わからなかったことが、わかるようになるところ」、「できなかったことが、できるようになるところ」、「今までつながっていなかった人や知識や物事が、つながるようになるところ」です。

 人が何かを学び成長すること、より良い自分に変わっていくということは、素晴らしいことです。成長すると人は変わります。成長する前の、変わる前の自分とは、ものの感じ方も考え方も変わっていきます。

 成長して変わる前の自分にとって大切でなかったことが、変わったあとの成長した自分にとって、とても大切なものになっていることは、よくあります。変わる前の自分には、成長して変わった後の未来の自分が、ものごとをどのように感じるかは、わかりません。しかし、今、皆さんがやろうとしていること、やらねばならないことなどに対して、どのように取り組むのかを任されているのは、今ここにいる皆さん自身です。

 どうか、1年後の自分、2年後の自分、あるいは5年後、10年後の未来の自分から、「あのとき、あんなふうに行動してくれて、ありがとう!」と言ってもらえるように、今、ここでの日々を大切に過ごしてほしいと願っています。

 

 このような集会で、私は皆さんに対して、「命を大切にしましょう」、「時間を大切にしましょう」、「きまりを大切にしましょう」という話を続けてきました。今日も、これからも、変わりません。

 卒業した先輩たちは、自分の命をより良く成長させるような生活を送って、巣立って行きました。それは、高校生としての時間を大切にしてきた、ということです。そして、まわりの人と一緒に成長してくる中で、お互いを大切にするために、ルールやマナーなどの、さまざまなきまりを大切にしてきた、ということでもあります。そんな先輩方に続いてください。

 さあ、長い休みに入る前には、いつも言っていますが、本を読みましょう。家の手伝いをしましょう。本は、自分の世界を広げてくれます。手伝いなどを通じて誰かの役に立つことは、自分の成長を感じる第一歩となります。

 そして、挨拶をしましょう。挨拶は、人と人との心を近づけ、心を開いてくれるきっかけになります。

 繰り返しになりますが、今年度の一年間が、皆さんにとっての成長につながるものであったことを祈りつつ、来年度の、これからの一年間が、さらに実を結ぶものとなることを願っております。休み明け、4月10日の始業式に、皆さんの元気な顔を見せてください。

 

第53回卒業証書授与式 式辞(令和5年3月10日)

   式辞

  暖かい春の光の中、桜のつぼみも膨らんでいます。校庭の木の枝の上には、埼玉県の鳥であるシラコバトが可愛らしい鳴き声を聞かせてくれています。今日の佳き日、PTA会長 上野 貴博 様を御来賓としてお迎えし、保護者の皆様にも御臨席いただき、埼玉県立羽生高等学校第53回卒業証書授与式を挙行できますことは、大きな慶びでございます。

 本日、本校を巣立っていく59名の卒業生の皆さん、おめでとうございます。そして、本校の教育活動に多くの御支援と御協力をお寄せくださった保護者の皆様にも、御礼と共に心からのお祝いを申し上げます。

 卒業生の皆さんは、校訓の三つの言葉どおり、年齢や、生まれ育った場所や、それぞれのアイデンティティーなどの違いを超えて、互いに「友愛」を育み、高校生活を通じて「自立」の力を養って、今日、巣立ち「飛翔」していく日を迎えました。

 卒業後、皆さんが新しい世界に挑戦していくにあたっては、多くの不安や、避け難い困難もあることでしょう。しかし、皆さんは羽生高校の生活の中で、それを乗り越えるための学びに取り組み、力をつけてきました。皆さんは成長しました。自分を信じて進んでいってください。

 さて、成長というものについて、ひとつ話をします。2~3歳くらいの子どもを小さい公園の砂場に連れて行って、「好きなだけ遊んでいいよ」と言うと、どうでしょう。おそらく喜びます。しかし、高校生相手に同じことを言ったら、きっと怒るでしょう。なぜなら、もう砂場の遊びでは満足できないほど成長したのですから。

 人は、成長すると、今までつまらないと思っていたことを面白く感じるようになったり、今まで気にしていなかったことに不満を感じたりします。それらの逆のこともあります。

 これからの生活の中で、皆さんも、頑張って願いが叶ったのに不満を抱くことがあるかもしれません。希望する道へ進んだのにつまらなく感じることがあるかもしれません。しかし、ひょっとしたら、その不満は皆さんが成長している証かもしれません。向上心を持っている証拠かもしれません。もしそうだったら、自分を成長させるために、具体的な努力をしましょう。その状況をより良くするための方法を、考えましょう。まわりの他人は変わってくれなくても、自分自身は、自分の努力次第でいくらでも変えることができます。

 そんなことを言われても難しい、と思う人は、思い出してください。皆さんは既にそういう体験をしています。新型コロナウイルス感染拡大防止のために、多くの学校行事が中止となったり制限されたりする中で、皆さんは、色々な楽しめる工夫をして、さまざまな行事を盛り上げ、たくさんの素晴らしい思い出を作ってくれました。それは、後輩への良き手本にもなりました。私たち教員の心にも、感動を与えてくれました。皆さんは、胸を張って誇って良いと思います。本校校長として、たいへん嬉しく思っています。

 今まで、全校集会などで私はいつも皆さんに「命と時間ときまりを大切にしましょう」と呼びかけてきました。卒業しても、その大切さは変わりませんが、今日は別の言葉を贈りたいと思います。

 皆さん、どうか、先生よりも、保護者の皆さんよりも、賢く、心豊かに、幸せになってください。それは、私たちにとっての希望であり、皆さんにとっての権利であり、皆さんが、皆さんの子どもたちの世代に対して負う義務でもあります。

 整いませんが、この言葉を、皆さんへの餞といたします。

 結びに、本校を巣立つ皆さんの今後の活躍と、御臨席の皆様や、卒業生を支えてくださったすべての皆様の、御健勝と御多幸をお祈り申し上げて、式辞といたします。

   令和5年3月10日   

             埼玉県立羽生高等学校長  新井 康之 

第3回学校説明会 校長挨拶(1月14日)

 皆さん、おはようございます。 今日は、羽生高校の学校説明会に足をお運びいただき、ありがとうございます。

 いよいよ、高校への出願を来月に控えた大切な時期になりましたね。この場所で、まだ緊張している人も多いと思います。勇気を振り絞ってここに来ている人も多いのではないでしょうか。私は、それでも勇気を出して一歩を踏み出してここにいる皆さんは、立派だと思います。この頑張りは、自分の未来を開くために必要なものです。

 私は、この学校の全校集会で、いつも「いのちと時間ときまりの3つを大切にしよう」と呼びかけていますが、皆さんは、自分のいのちを高校でより良く成長させるために、学校説明会という世の中のきまりごとをうまく使って、中学生としての大切な時間を費やしてここにいる。これは大変立派なことです。

 本校に在籍している先輩方の多くは不登校を経験しています。また、ほかの高校に一度進学したけれども、思うように続けることができなくて、何らかの理由でやり直すために本校で頑張っている人もいます。

 羽生高校は、細かい校則がない代わりに、「本当に大切なこと」がきちんとできない人には厳しい場所です。高校生活を真面目にやり直そうとしている仲間の邪魔をすることは許されません。授業が何より大切です。学ぶことが、あなたを成長させてくれます。より良い自分に変えてくれます。

 さて、皆さんが高校を選ぶときのポイントは何ですか? 施設や設備、教育システムや学校の雰囲気など、色々あると思いますが、大事なのは、最後の最後に、皆さん自身が自分の意思で受検する学校を決めることです。自分にとっていい学校かどうかを見定めて、入試に挑戦してほしいと思っています。

 決断をほかの人に任せると、何か嫌なことや上手くいかないことがあったとき、誰かのせいにして逃げてしまいたくなります。自分で決めたという覚悟は、皆さんを成長させてくれますし、苦しいときに自分を支える力の一つになってくれます。

 今日は、是非、自分の目で羽生高校をじっくり見て、説明を聴いて、雰囲気を肌で感じてください。皆さん一人ひとりが、より良い高校選びをしていくことができるよう、私は祈っています。

 

 ところで、皆さんが正門を入ってすぐにあった体育館の壁に、本校の三つの校訓「友愛・自立・飛翔」が書いてあるのを御覧いただけましたでしょうか?

 この校訓にあるように、本校には、生徒の皆さんに成長してもらい、世の中に飛び立ってもらう、「飛翔」してもらうための学びがあります。

 そして、学習においても、生活においても、自分の希望と意思で選べる多くの「自由」があります。そして、自由と表裏一体の「責任」の大切さを学ぶ機会もあります。選択と決断の積み重ねが、主体的に学ぶ力を育てます。そうして、校訓にもある「自立」の力を身につけてもらいます。

 そんな学校生活の中で、お互いを認め合い助け合うことのできる力を養う「友愛」も、大切な校訓です。本校の学校行事で中心となって活躍してくれる生徒会役員の皆さんの多くは、頑張っている先輩たちに親切にしてもらった経験から、自分もそんな先輩になりたいと思って生徒会に入ったと言っています。皆さんも、そんな先輩たちの後に続いてもらえればいいなあと、私は考えています。

 それでは、羽生高校にある、生徒の皆さんを支える様々なシステムについて、これから説明があります。よく聞いていただき、有意義な時間にしてもらうことを願いつつ、私からの挨拶といたします。

体育祭「第5回 翔羽祭(とびはねさい)」開会式における校長挨拶(11月2日)

 皆さん、おはようございます。いい天気になりました。小春日和です。

 昨夜の雨が、細かい埃(ほこり)などを洗い流してくれて、さらに気持ちのいい朝になりました。こんな空の下で、皆さんが若い力を躍動させる「翔羽祭」を開催できることに、校長として大きな喜びを感じています。この日のために頑張ってきた、体育委員をはじめとする生徒の皆さんや先生方に心から感謝いたします。

 私は、皆さんが頑張る姿を見ることができると、幸せを感じます。去年の翔羽祭も幸せな一日でした。

ところで、幸せといえば、皆さんは、幸せとはどのようなものか考えたことがありますか?一度幸せになると、エスカレーターに乗ったように、ずっと幸せは続くのでしょうか?

 ある作家によれば、幸せは線のように持続するものではなく、点のようなものなのだそうです。そして、過去に経験した小さな幸せを集めて見返したとき、その小さな点の集まりが、自分だけの星座のような形になっていることが、その人の人生にとっての本当の幸せなのだそうです。

 今日のような行事に一生懸命取り組むことは、皆さんの「いのち」を輝かせることです。今日、皆さんが頑張る姿が、誰かの素敵な思い出のひとつになるかもしれない。それが何年も何年も経ってから振り返ったとき、誰かの「幸せの星座」を作る小さな星のひとつになっているかもしれない。皆さんの努力のひとつひとつには、そんな光が隠れています。

 今日も、「いのち」と「時間」と「きまり」を大切にして、事故なく、いい思い出を作れるような翔羽祭にしましょう。素敵な一日になるよう祈りつつ、開会の挨拶といたします。

避難訓練における校長講話(10月20日)

 みなさん、おはようございます。

 本日は、羽生消防署から副署長様をはじめ5名の署員の方に御指導いただきます。改めて御礼申し上げます。お忙しい中、ありがとうございます。

 さて、これから生徒の皆さんに向けて、避難訓練の目的、迅速な避難、点呼の大切さ、この3つについてお話しします。

 この避難訓練は、地震や火事などの災害が起きたとき、皆さんの一番大切な「いのち」を守ることができるようにする、それを目的として行いました。まさかのときに、どんな動きをすればよいのか、実際に体を動かして体験しておくのは、とても重要なことです。

 歌手や演奏家や演劇に携わる人たちがステージでリハーサルをするのは、実際に行う場所で動いてみないとわからないことが山ほどあるからです。避難訓練も同じです。実際に動くときに、廊下や階段で邪魔になるものはなかったでしょうか。また、移動するときの状況や経路、消火器の場所などに不備は無かったでしょうか。なめてかかると命を落とすのが災害です。「備えあれば憂いなし」と言いますが、本日の避難訓練は、まさに、その「備え」を身に付けてもらうことを目的としています。 

 次に、迅速な避難の大切さについて、お話しします。今日は、避難を促す放送が流れてから点呼が終了するまでに、約3分50秒かかりました。なかなか良い結果だったと思います。

 しかし、1秒遅れることが命取りになるかもしれません。逆に、慌てて階段で人を押してしまい、かえって多くの死傷者を出してしまうかもしれません。そんなニュースは今までたくさん耳にしていますが、今日の皆さんは、時間も、行動も、概ねスムーズでした。

 では、点呼について考えてみましょう。皆さんの点呼の状況はどうだったでしょうか。一人の命も落としてはいけない状況で、万一、いるはずの人数が足りなければ、消防署の方にも、いち早く知らせなければいけません。そういう意味で点呼もたいへん重要なのです。

 そして、誰がいるのかいないのか。「学校に来ているはずの人がいない」ということで、もしも、心配して探しに戻って被害に遭う人がいたら、どうでしょうか。また、遅れて登校してきたのに報告がないため、いないことになっている人が逃げ遅れていても、誰も気がつかない。そんなことがあったらどうでしょうか。

 そう考えると、毎日学校に来ることがそれほど得意ではない人が多く入学してくる私たちの学校では、点呼は、ものすごく大切なことなのです。先生方が皆さんに対して丁寧に出欠確認をするのには、このように大事な理由があります。どうか、普段から、欠席や遅刻をするときの連絡、遅れて登校したときの報告、それらのきまりを大切にしてください。

 今日は、「大切な命を守る」という避難訓練の目的、迅速な避難が必要だという「時間の大切さ」、点呼のためにも出欠について連絡・報告をするという「きまりの大切さ」、これを踏まえて、お話をしました。この後の、副署長様からの指導講評をよく聴いて、今後に生かしてください。終わります。

 

勾玉祭(文化祭)開会式 校長あいさつ(10月15日)

 皆さん、おはようございます。

 「友愛の絆! You(友)& I(愛)で輝く勾玉祭~」をテーマに、いよいよ、当日を迎えました。

 生徒会の皆さん、実行委員の皆さん、それぞれの催し物を準備してきた生徒の皆さん、指導してくださった先生方、協力をいただいたPTA・後援会の皆様、それぞれに向けて心から御礼申し上げます。

 さて、昇降口に、生徒会の皆さんが作った大きな木が綺麗な花を咲かせています。その花は、よく見ると折鶴です。これは、とても意味のある素敵なことだと、私は考えています。

 昔から日本で「鶴は千年、亀は万年」と言われるように、鶴は長生きの象徴、幸せのシンボルとして、愛されています。そして、願いが叶うよう祈りを込めて折る「千羽鶴」。羽生高校でも、2年前に先輩たちが作りました。コロナ収束を祈って羽生市役所に飾ってもらい、新聞の記事にもなりました。

 今年の鶴も、過去の先輩たちの思いを受け継いで、今年の皆さんの「花開くように素晴らしい勾玉祭にするぞ」という願いと祈りが込められています。そして、花が実を結んで新しい命が芽吹くように、皆さんの後輩たちが、皆さんの思いを受け継いで、さらに羽生高校を良い場所にしていく。そんな未来にも、つながります。

 学校行事に限りません。皆さんのすることは、いつでも、何でも、過去と現在と未来の命につながっています。

 過去と現在と未来がつながる、勾玉祭の新しい1ページを、皆さんが作ります。素敵な勾玉祭にしましょう。

前期終業式校長講話(9月30日)

 改めまして、皆さん、おはようございます。 (こんばんは。)

 終業式に先立ちまして、全国高等学校定時制通信制生徒生活体験発表会埼玉県東部地区大会に出場した3人の生徒の皆さんに、表彰としてメダルの授与を行いました。大会当日は、私もホールに出向いて客席で発表を聞かせてもらいましたが、皆さん、たいへん素晴らしい内容でした。東部地区の代表として県大会に進む人もいます。このような努力する姿を生徒の皆さんに見せてもらえることは、校長として本当に嬉しいことです。

 また、先日は、生徒会の皆さんが勾玉祭に向けてオリジナルTシャツ販売の受付をしたり、当日に流す動画を撮影したりしている姿も見せてもらいました。そうした一つひとつが、私にとって楽しく嬉しい場面でした。若者が頑張る姿や成長する姿を目の前で見ることができるのは、大人にとって、とても幸せなことです。

 

 今回の終業式も画面を通してのものとなりました。早く皆さんと一緒に大きな声で校歌を歌いたいと、心から思っています。

 さて、皆さんが今聴いた校歌の作詩者である宮沢章二さんは、羽生市の出身です。知っている方も多いと思いますが、東日本大震災のとき、ACジャパンのCMで「行為の意味」という詩の一節が紹介され、全国的に有名になりました。もともとは次のような詩です。

       行為の意味      宮沢 章二

   あなたの心はどんな形ですかと

    人に聞かれても答えようがない

   自分にも 他人にも心は見えない

    けれどほんとうに見えないのであろうか

 

   確かに心はだれにも見えないけれど

    心づかいは見えるのだ

   それは 人に対する積極的な行為だから

 

   同じように胸の中の思いは見えないけれど  思いやりは見えるのだ

    それは 人に対する積極的な行為なのだから

 

   あたたかい心が あたたかい行為になり

    やさしい思いが やさしい行為になるとき

   「心」も「思い」も、初めて美しく生きる

    それは 人が人として生きることだ

 

 皆さん。私も含めて、若いうちは形式的なことに反発して、「形を整えることなどに意味はない。人間の内面を評価しろ。心を見てくれ。」などという格好いい台詞に憧れるものです。

 しかし、この詩にあるように、心は見えません。「本当は、俺は優しいんだ」と言っても、人に優しくしない人は、優しい人だと思ってもらえません。

 情けない話ですが、私も中学生のときなどに、親から「宿題は?」と言われて、「今やろうと思っていたのに、そんなこと言われたから、やる気がなくなっちゃったよ」などと反発したことがありました。今、冷静に考えると、そのときの私は、ただ口先だけの怠け者でした。

 今、私は日本的なものが好きになって、ある武道や茶道などを嗜んでいますが、「形に表れる心」というものに触れることが、とても素敵な、自分にとっての大切な体験や思い出になっています。

 

 さて、皆さん。今日で前期が終わります。短い秋期休業をはさんで、後期が始まります。前期の自分の高校生活が自分の思うように上手くいった人も、そうでなかった人も、どうか、ぜひ、その原因を考えてみてください。振り返って、何が良かったのか、何が悪かったのか、考えてください。

 もし、上手くいかなくて元気がなくなっているようなら、あなたの心に中にある良いものを、どんな小さなことでもいいから、形にしてみてください。行いにしてみてください。それは、あなたの命をより良く使うための、第一歩です。高校生としての限られた貴重な時間を大切にする、第一歩です。そして、ものごとを形にするときや、行いとして誰かに働きかけるときには、相手を大切にするためのきまりごと、傷つけないようにするためのルールがあります。自分勝手にならないための、きまりです。自分の独りよがりな行いを、相手に押しつけないようにするための、きまりです。

 皆さん。命と、時間と、きまりを、大切にしましょう。

 

 人間は完璧ではありませんから、誰にでも、うまくいかないことは山ほどあります。しかし、その原因をよく考え、対策を行動に移せば、人は成長します。逆に言えば、悪いところが見つかるのは、良くするためのチャンスなのです。失敗をしないと、どこが悪いのかわかりません。

 とすると、人間は、何かを成功させるためには、まず失敗をしないといけないのかもしれません。昨年のこの機会にも同じことを言いましたが、「失敗は成功の母」どころではなく、「失敗は、成功の必要条件」と言うこともできるかもしれません。

 だから、皆さん。失敗したことで自分を責める必要はありません。なぜそうなったかを、ちゃんと考えればいいんです。次にうまくいくようにするための、ヒントにすればいいんです。

 命にかかわるような取り返しのつかないことでなければ、失敗を悩み続ける必要はありません。色々なことをしっかり考えて、考えた分だけ成長して、今年度の後半を、より良いものにしていきましょう。

夏季休業明け全校集会校長講話 (9月1日) 

 改めまして、皆さん、おはようございます。(こんばんは。)

 この夏休み中に、生徒の誰かに大きな事故等があったという報告は、受けていません。皆さんが元気に登校する姿を見ることができて、たいへん嬉しく思っています。

 今回も、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、リモートによる集会の形を取っています。今日は、夏休みの前に皆さんに呼びかけたことと、いつも集会のとき話題にする三つのことを中心に、お話しします。

 

 さて、生徒の皆さんは夏休みをどのように過ごしましたか? 私は、夏休みに入る前の日の全校集会で「夏休みの間に、皆さんにしてほしいこと」について呼びかけました。

 ひとつは、家の手伝いでも何でも、どんな小さなことでも良いから、誰かを助けるような良いことをしましょう、ということでした。もうひとつは、本を読みましょう、ということでした。素敵な本に出会えることは、素敵な友達に出会えることと同じくらい貴重なことです。

 どうでしたか? どんな小さなことでもいい、誰かの助けになるようなことができましたか?

 特別なことでなくても、良いのです。誰かの心に残る夏休みのひとときの思い出の、その中にあなたがいたというだけで、それは誰かの助けになること、価値のあることです。だから、誰かと過ごして楽しかった思い出があるなら、その気持ちを、その人に伝えましょう。その「伝える」という行いも、誰かの心を明るくするために助けになることのひとつです。

 もし、それでも自信のない人は、今日でも明日でもいいです。誰かに明るく挨拶をしましょう。挨拶は、「あなたを大切にしたいという気持ちがありますよ」という心を伝える第一歩です。挨拶は、人と人との間を近づけるものです。ことばに出した挨拶の数だけ、皆さんは価値ある行いを実行したことになります。

 

 次に、いつもの三つのことについて話をします。そう、皆さんの大切な「いのち」と「時間」と「きまり」についてです。

 集会の前に、夏休み中の基礎学力向上補習で皆勤賞の皆さんが表彰されましたね。また、生活体験作文の素晴らしい発表もありました。この他にも、部活動や生徒会など、色々な場面で頑張っている人がたくさんいると思います。色々なことに頑張ることは、皆さんの「いのち」を成長させ、素敵な自分に育ててくれるエネルギーになります。9月から、またそのような皆さんの姿を見ることができるのを、私はとても嬉しく感じています。どうぞ、一番大切な「いのち」を、これからも大事にしていってください。

 もしも、今、悩みごとがある人には、心して聞いて欲しいのですが、つらいことや苦しいことの重さは、いのちを大切にしないと軽くなりません。これは本当のことです。

 先ほど、スクールソーシャルワーカーとして来ていただくことになった岡村先生を紹介しました。つらいとき、誰かに相談したいとき、勇気を出して、信頼できる大人に声をかけてください。 

 さて、まだ暑いとはいえ、暦の上では秋になりました。秋の学校には、たくさんの行事が用意されています。皆さんが高校生として過ごせる限られた貴重な時間を大切にして、思いっきり楽しんでいただきたいと思います。行事を一番楽しむ方法は、一所懸命準備をすることです。あなたが思いを込めて、手間をかけ、時間をかけるほど、その行事はあなたにとって特別なものになります。そのように集中することが、あなたの時間を大切にすることにつながります。先生方も皆さんを強力にバックアップします。どうぞ、思い切り頑張って準備し、楽しんでください。

 そして、学校という多くの人が関わる場所では、お互いが気持ち良く過ごすために、また、お互いに安心・安全な生活を守るために、様々な「きまり」があります。どうか、ルールやマナーの裏側に、なぜそのようなきまりがあるのか、ということを考えて、きまりを大切にして過ごして欲しいと思います。

 

 今日は、読書について、そして、誰かを助けるような良いこと、そのひとつとしての挨拶について、話をしました。また、いつものように「いのち」と「時間」と「きまり」を大切にしてほしいということについて、話をしました。9月からの皆さんの学校生活が素敵なものになるよう、祈っています。

夏季休業前全校集会校長講話 (7月26日) 

 皆さん、おはようございます。(こんばんは。)

 先ほど、硬筆展関連で4名の生徒の皆さんが表彰されました。もちろん本人の努力と先生方の御指導の成果ですが、他にも、本校には色々な部活動などで頑張っている人が、たくさんいます。そうした生徒の皆さんの代表として表彰状を受け取ってもらおう、私は、そんな思いも込めて表彰状をお渡ししました。

 

 新型コロナウイルスの感染は収まりつつあるように見えていましたが、今月に入ってから、今までにないほどの激しさで感染が拡大しています。感染拡大防止のため、このようにリモートで画面を通して話をさせてもらいます。

 今日は、大切にしてほしいこと、当たり前のこと、夏休みにしてほしいこと、この3つについて話をします。

 

 さて、皆さんにこうした機会に話をするとき、私はいつも「いのち」と「時間」と「きまり」の三つを大切にしてほしい、ということを言っています。まずは、命について。

 勉強でも運動でも趣味でも、また、友達同士の関係や職場の人間関係の中であっても、自分を成長させるということは、皆さん自身の命をより良く使うことになります。だから、人が成長するのを邪魔する「いじめ」や「からかい」は、人の命を粗末にすることであり、許されないことです。

 そして、同じように、皆さんには、高校生として過ごしている限られた時間を、大切にしてほしい。自分をより良く成長させるために使ってほしい。時間を大切にすることは、目の前のやるべきことを大切にすることから始まります。ぜひ、やるべきことに取り組んでほしいと思います。

 また、ルールやマナーなど、すべてのきまりごとには、それが決められた理由があります。きまりを破ることは、決して格好いいことではありません。きまりを破ると、結局は、誰かを傷つけたり、自分が傷ついたり、不便になったり、損をしたりします。きまりを大切にして、考えて行動するようにしましょう。

 一つ目のお話は、この「命と時間と決まり」の3つを大切にしてほしい、ということでした。

 

 二つ目のお話は、「当たり前」というものの、素晴らしさと恐ろしさについてです。

 6月の末、気温が40℃近くになる日が続いたときのことです。朝、羽生駅から学校に来る途中、熱中症になって倒れてしまった人がいました。一つ間違うと大変なことになるかもしれないところでしたが、そこを通りかかった本校の生徒が、助けてくれました。119番に連絡して、いちはやく救急車の手配もしてくれたおかげで、命にかかわるような大きな事故にもならずにすみました。とてもありがたいことですが、何よりも、当たり前のように動いてくれた。その行いが、本当に素晴らしいと思います。昨年度も、人権教育の講演会で気分が悪くなった人がいたときに、すぐに気づいて動いてくれた人もいました。これも素晴らしいことでした。

 世の中には、今の話で紹介した生徒の皆さんのように、困っている人を助けるのは当たり前のこととして動いてくれる人がいます。尊い立派なことだと思います。

 しかし、世の中には、欲しいものがあると他人を傷つけてでも手に入れようとする人がいます。人の命や暮らしを壊してしまう戦争も、そのような人にとっては、当たり前の手段の一つなのかもしれません。

 このように、世の中には、素晴らしい「当たり前」と、恐ろしい「当たり前」があります。人によってこれほど違うのは、どうしてなのでしょう。実は、このようなこととなるきっかけは、その人の生き方、毎日の暮らし方の小さな違いなのです。

 毎晩歯を磨いて寝る人は、磨くのが当たり前になります。人に親切にして、お互い笑顔になるように暮らしている人にとっては、困っている人を助けるのが当たり前になります。嫌なことがあったら人に八つ当たりして、上手くいかないと人のせいにして暮らしている人にとっては、他人を傷つけることが当たり前になってしまいます。

 皆さん。「普通」とか「当たり前」とかいうものは、素晴らしくて、恐ろしいものです。毎日のちょっとしたことの積み重ねで、人は、神様みたいに素敵な人にもなれるし、悪魔のような嫌な奴にもなれます。これからの皆さんにとっての当たり前が、少しでも良いものになるよう祈っています。

 

 最後に、皆さんに、夏休みにしてほしいことです。家の手伝いでも何でも、どんな小さなことでも良いので、誰かを助けるような、良いことをしましょう。もう一つ。本を読みましょう。

 

 今日は、命と時間と決まりを大切にすることについて、当たり前ということについて、夏休み中にしてほしいことについての3つを話しました。皆さん、9月1日に、また、元気な顔を見せてください。

始業式 校長講話 (4月8日)

 おはようございます(こんばんは)。

 昨年度に続き、校長として皆さんと一緒に過ごせることを嬉しく思っています。

 さて、令和4年度が始まりました。この始まりの日にあたって、皆さんは、何か目標を考えていますか? ぜひ、目標を立ててください。

 人は皆、それぞれ夢を持っています。たとえば、欲しいもの、行きたい場所、就きたい職業、なりたい自分。さまざまな願いがあると思います。私も「こうなればいいなあ、ああなればいいなあ」と思ったことが、たくさんありました。しかし、「こうなればいいなあ」と思うだけでは、夢は夢のままです。ずうっと、実現してはくれません。「こうなればいいのになあ」と思ったら、そうなるためには何が必要なのか、調べましょう。自分は何をすれば良いのか、考えましょう。それができると、夢は目標に変わります。どこにも存在しない空想の中の場所ではなくて、実現可能な、たどり着くべきところに変わります。

 皆さん、目標を立てましょう。しかし、あまりにも大きな遠い目標だと、自分がどのくらい目標に近づいているかわからなくなって、疲れてしまうかもしれません。大きな目標への道筋を細かく分けて、いつまでに何を実現するかといった、短い周期の短期目標を立てて、その短期目標を実現するためには、毎日何をすればよいのかを考えましょう。また、その毎日することは、自分にやれる範囲のことでないと続けるのがつらくなってしまいますから、気をつけましょう。

 私が昨年度から言い続けている「いのちと、時間と、きまりを、大切にしましょう」という呼びかけは、この、目標を実現するということにも、つながるものです。

 「なりたい自分になる」という目標を実現することは、自分自身のいのちを、願った方向に成長させることです。

 時間を大切にするというのは、大きな目標にたどり着くための小さな目標を実現するために、毎日やるべきことをやるということです。今、目の前にある、やるべきことを大切にするということです。

 そして、きまりを守るということを呼びかけるのは、皆さんに、人として寂しい目標や、悲しい目標や、醜い目標を立ててほしくないからです。自分の目標を実現するためなら、ほかの人に迷惑をかけてもかまわないとか、自分の目標のためなら、人の心や体を傷つけても気にしないといった、寂しい、悲しい、醜い目標の立て方をしないでほしいと、私が願っているからです。

 今、世界のどこかでは、ある国のトップという立場の人が、自分の目標を実現するためには国際法というきまりを破ってもかまわない、ほかの国の人を殺してもかまわないという考えなのでしょうか、よその国に軍隊を派遣しています。それは、人として寂しい、悲しい、醜い目標であり、寂しく、悲しく、醜い実現のしかたです。

 皆さん、いのちと、時間と、きまりを大切にして、目標を立ててください。10年後の自分、5年後の自分、来年の3月の自分を考えてください。そしてその実現のためには、明日の自分、今日の自分、今の自分は何をするべきなのかを、考えてください。

 このお願いを、始業式における校長講話といたします。

 

入学式 式辞 (4月8日)

   式 辞

 鳥の歌が聞こえ、桜の花が春風に舞う今日の佳き日、PTA会長 吉岡英明 様を御来賓としてお迎えし、保護者の皆様にも御臨席いただき、埼玉県立羽生高等学校 第五十二回 入学式を挙行できますことは、大きな慶びでございます。 ここにお集まりの皆様、また、この式の実現に尽力してくださったすべての方々に、心からの感謝を申し上げます。

 さて、先ほど呼名された七十七名に、入学を許可いたしました。新入生の皆さん、入学おめでとうございます。高等学校は、義務教育ではありません。皆さんの多くは、人生で初めて、自分の進路に関わる選択と決断を経験してこの学校に入学しました。それぞれの不安や迷いを乗り越えて、皆さんはここに座っています。胸を張ってください。これからは、羽生高校の生徒として一緒に学んでいきます。私たちは、皆さんを歓迎します。皆さんのこれからの努力を、応援します。

 そして、入学生の皆さんを育て、支えてこられた保護者の皆様、おめでとうございます。また、この場にはいない、今まで新入生たちを見守り、助け、応援してくださった方々にも、心よりお祝い申し上げます。

 創立七十五年目を迎える本校は、埼玉県の定時制教育のさきがけとして、多くの人材を社会に送り出してきました。卒業生は、高等学校での学びを踏まえて、あらゆる分野で活躍し、世の中を支えています。今、本校に在学中の先輩の中にも、つらい体験を乗り越えて、充実した高校生活を送っている人が大勢います。新入生の皆さんも、羽生高校での学びと高校生としての生活を、自分の成長のために生かしていってください。

 では、皆さんに、これから大切にしてもらいたいもの、守ってもらいたいものについて、三つお話をします。

 一つ目は、命、人の命です。皆さんも私も、大切な「命」を持っています。どんな人にも平等に、命は一つしか与えられていません。この最も大切な宝は、何があっても守らなければなりません。自分の命を大事にするということは、自分の人生を大切にして、自分を成長させるということです。自分の命をより良く使うということです。

 そして、他人の命も大事にしてください。誰かをいじめたり、誰かが頑張って成長しようとしているのを邪魔したり、何かに真剣に取り組んでいる人をからかったりするのは、他人の命を粗末にすることです。そんな人は自分自身のことも大切にできません。命の価値は平等ですから、自分の命も他人の命も大切にしてください。

 大切にしてもらいたい二つ目のものは、時間です。時間というものも、人間に平等に与えられた財産です。大事にしてください。授業でも、部活動でも、あなたが限られた高校生活の中で、そのとき取り組んでいること、目の前にあるやるべきことを大切にすることが、時間を大事にすることです。

 三つ目は、きまりです。きまりを大切にしてください。すべての「きまり」には理由があります。そのきまりを守ると、便利になったり得をしたりします。あるいは、その決まりを守ると、誰かを傷つけずに済んだり、自分が傷つかずに済んだりします。若い頃には、決まりを破ることが格好良く見えてしまうことがあります。しかし、それは錯覚です。なぜ、その決まりがあるのか、理由を考えるようにしてください。

 もしも、その決まりがあるために、かえって不便な人や傷つく人を増やしてしまっているのなら、正しい手続きで決まりを変えましょう。決まりを破ったり壊したりする力ではなくて、誰かと協力してもっと良い決まりをつくる力、決まりを変える力を手に入れましょう。そんな力を養いましょう。

 命と、時間と、決まりを大切にしてください。これが、守ってほしい三つのことです。

  さて、保護者の皆様、入学生の皆さん。本校は「友愛」「自立」「飛翔」という三つの言葉を校訓として、単位制という、一人ひとりの希望や生活リズムに合わせることのできる柔軟な教育システムをとっています。しかし、このシステムは、大きな自由がある反面、大きな責任を自分で負わなければならないものでもあります。卒業するためには自分自身をしっかり管理できることが必要になります。

 保護者の皆様、どうか、本校の教育方針について御理解いただき、学校と連携しながら、お子様の健やかな成長と卒業を実現するための支援をしていただきたいと存じます。我々教職員も全力で生徒の皆さんの努力を支援いたします。

 最後に、入学生の皆さん、どうか、保護者の皆様をはじめ、皆さんが高校で学ぶことができるように道を拓いてくれた人達に感謝してください。そして、今度は皆さんが、どんな小さなことでも良いですから、誰かのために道を拓いてあげられるような力を、この羽生高校で身につけて卒業してください。皆さんが実りある高校生活を送り、大きく成長することを祈念し、式辞といたします。

  令和四年四月八日

                            埼玉県立羽生高等学校長 新井 康之

後期終業式 校長講話(3月22日)

 後期の終業式を迎えました。今年度の締めくくりとなります。皆さんにとってのこの1年間が、どんな小さなことでもかまいません、自分が成長したと思えるようなもの、何らかの努力が実を結んだと思えるようなものであることを祈っています。

 生徒会の皆さんが作ってくれた「翔」という冊子があります。皆さんに配られるものですが、この中に、私の思いも書かせてもらいました。竹のしなやかで強い成長と、稲のみのりを話題にして、普段の日の大切さと、特別な行事の日の大切さの両方を考えてもらおうと思ったものです。読んでみてください。 

 さて、3月11日は卒業式でした。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、卒業生、教職員、保護者の方のみで実施され、在校生の出席は、みんなの代表として送辞を述べてくれた生徒会長ただひとりという形でした。今の在校生のほとんどは、本校の卒業式の雰囲気を味わっていない。とても残念なことです。

 羽生高校の第52回卒業式は、とても素晴らしいものでした。勝手なおしゃべりをする人はひとりもいません。皆、真剣に式に臨んでいました。また、さまざまな代表や表彰で前に出る生徒の皆さんも含めて、卒業生の皆さんが、ほんのわずかな動作の一つ一つにも、丁寧に心を込めて行っていることが、見ていてわかるほどでした。

 皆さんには、在校生代表の送辞と、卒業生代表の答辞を印刷してお配りしますので、その様子の何分の一かでも、味わってもらえればと思います。立派な挨拶でした。挨拶は人の心を開くものだということと、その大切さを、改めて感じさせられる思いがいたしました。 

 さあ、私は皆さんに対して、命を大切にしましょう、時間を大切にしましょう、ルールやマナーなどのきまりを大切にしましょう、という話を1年間続けてきました。今日も、これからも、変わりません。

 立派な卒業式を迎えた先輩たちは、大切な自分の命をより良く成長させ、輝かせるような学校生活を送り、卒業を迎えました。それは、高校生としての時間を大切にしてきたということでもあります。そして、まわりの人と一緒に成長してくる中で、お互いを大切にするために、無駄に傷つけ合わないために、ルールやマナーなどをはじめとする、さまざまなきまりごとを大切にしてきました。

 皆さんも、どうか、そんな先輩方に続いてください。 

 そして、長期休業に入る前には、いつも言っていることですが、本を読みましょう。家の手伝いをしましょう。本は、自分の世界を広げてくれる手がかりになります。手伝いなどを通じて誰かの役に立つことは、自分の成長を感じる第一歩になります。 

 繰り返しになりますが、今年度の一年間が、皆さんにとっての成長につながるものであったことを祈りつつ、来年度の、これからの一年間が、さらに実を結ぶものとなることを願っております。

 春休み明けの、来年度の始業式に、皆さんの元気な顔を見せてください。

 

卒業式 式辞 令和4年3月11日(金)

 まだまだ朝晩は冷え込むものの、穏やかで暖かい春の日差しが感じられるようになってまいりました。今日の佳き日、PTA会長 吉岡英明 様を御来賓としてお迎えし、保護者の皆様にも御臨席いただき、埼玉県立羽生高等学校 第五十二回 卒業証書授与式を挙行できますことは、大きな慶びでございます。

 本日、本校を巣立っていく六十名の卒業生の皆さん、おめでとうございます。 そして、本校の教育活動に多くの御支援と御協力をお寄せくださった保護者の皆様にも、御礼と共に、心よりのお祝いを申し上げます。

 卒業生の皆さん。皆さんは、本校の門をくぐった時期の違いや年齢の差、それぞれのアイデンティティーの違いなどを超えて、幅広い友情を育み、高校生活を立派に送ることができました。また、新型コロナウイルス感染拡大防止のために多くの学校行事が中止となったり、従来と大きく異なる形で実施されたりする様々な制約の中で、勾玉祭や翔羽祭、球技大会などの学校行事はもとより、部活動や生活体験発表会などにおいても見事な成果を上げてくれました。今でも、皆さんが活躍している姿が目に浮かんでまいります。

 そして、そんな充実した高校生活の締めくくりとなる希望進路の実現においても、皆さんは、例年にない大きな成果を残しました。これらのことは、皆さんの後輩たちの良き手本、目標にもなります。卒業にあたり、胸を張って誇って良い、素晴らしいことです。本校校長として、たいへん嬉しく思います。

 さて、「友愛、自立、飛翔」の言葉どおり羽ばたいていく皆さんが、卒業後も自分自身を成長させていくことを期待して、餞の言葉を送ります。

 まず、皆さんは多くの人との関わりのなかで生きているということを忘れないでください。

 コロナ禍の中で、人と人とのコミュニケーションがデジタル機器をとおした間接的なものになっているという社会状況があります。しかし、だからこそ、現実に人間同士がふれあう機会を持ち、共に喜び、感動し、助け合う心を育むことが大切になってきます。戦争を起こす人の多くは、人の命を単なる数字やデータとしてとらえているのではないかと私は考えています。

 この一年間、私は皆さんに「命と時間ときまりを大切にしましょう」と呼びかけてきましたが、卒業しても、いくつになっても、それは変わりません。 その大切さは、実際に人と人とが関わりあい交流を深めることでこそ実感できるものだと私は考えています。自分と違う考えの人と触れあうことによって、心の中に育つものがあるのです。 

 次に、「事は、起こるものだ」ということを、忘れないでください。

 人生の中には、どんなに努力しても、実現できないことがあります。また、この卒業式の前に黙祷をいたしましたが、大切なときに自然災害に遭ってしまうということも起こり得ます。コロナ禍のように思わぬ病気が襲ってくることもあります。そして今、テレビのニュースを見れば、よその国からの理不尽な暴力にさらされている人々の姿が目に飛び込んできます。

 しかし、皆さん。本当の人間の価値は、事が起きてしまった、その後に、わかるものなのです。希望どおりいかないときや、予定どおりいかないときに、どうするのか。そこで、人としての価値が試されるのです。

 皆さんの中で多くの人が、中学生の時に一度くらいは、「自分は高校に入学できるかなあ」と不安に思ったことがあるのではないでしょうか。あるいは、羽生高校生として学んでいる途中でも、「自分は、無事に卒業できるかなあ」と不安に思った人がいるのではないでしょうか。

 しかし今、皆さんは卒業証書を授与されました。

 言い換えるならば、皆さんは、自分にとって深刻なことや不安なことが起こった、その後に、頑張ることができた人たちなのです。

 確かに、一度も失敗しないで人生を送るのは、立派で、めでたいことです。しかし、それ以上に立派で、それ以上に素晴らしいことは、何か事が起きてしまった後、もう一度立ち上がって頑張ることができる、ということなのです。

 皆さんの人生は、今までよりも、これからの方が遙かに長いものです。今までよりも、これからの方が大変かもしれません。けれども、大丈夫です。皆さんは既にもう、乗り越えた経験を持っています。自信を持ってください。

 

 皆さんは、先生よりも、保護者の皆さんよりも、賢く、心豊かで、幸せにならなければいけません。それは、私たちの世代にとっての希望であり、皆さんの世代にとっての権利であり、皆さんが、皆さんの子どもたちの世代に対して背負う義務でもあります。

 整いませんが、この、希望と権利と義務が、皆さんへの餞です。

 結びに、本校を巣立つ皆さんの今後の活躍と、ここに御臨席いただいたすべての皆様の御健勝と御多幸とお祈り申し上げて、式辞といたします。