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校長講話等

学校説明会(1月15日、1月26日)校長挨拶

 (※15日と26日の挨拶ですが、話の中で一部共通しないところがあります。)

 皆さん、おはようございます。羽生高校の学校説明会においでいただき、ありがとうございます。今日は、新型コロナウイルスの感染者数が再び増加する中で皆さんの健康を守るため、このように別室からリモートで御挨拶をいたします。御協力に、感謝申し上げます。

 公立高校への出願を来月に控え、皆さんも本格的に志望校を固めている時期だと思います。そのように大切な時ですから、ここに来るときに、緊張してドキドキしていた人も多いのではないでしょうか。自分で精一杯の勇気を出して、ここに来ている人も多いのではないでしょうか。私は、その一歩を踏み出した皆さんは素晴らしいと思います。その頑張りは、自分の未来を開くために必要なものです。

 本校に在籍している先輩方の多くは、不登校を経験しています。また、ほかの高校に一度進学したけれども、思うように続けることができなくて、何らかの理由でやり直すために、本校で頑張っている人も多くいます。私たち教職員は、そういう「頑張る人」を心から応援します。

 今日来てくれた皆さんの中には、いないと思いますが、「服装頭髪などで細かい校則がないから楽そうだ」とか、「わがまま勝手なことができそうだ」などと思って受検しようと考えている人がいたら、大きな間違いです。本校は、細かい校則がない代わりに「本当に大切なこと」がきちんとできない人には厳しい場所です。授業がいのちです。高校生活を真面目にやり直そうとしている仲間の邪魔をすることも、許されません。確かに、入学をすることだけなら、それほど難しくない学校です。しかし、きちんと授業に取り組めない人には、続けていくのが難しい学校です。 

 また、外国から来た人も多く学んでいます。今年の夜間部の生徒会長は、外国籍の生徒でした。素晴らしい活躍をしてくれました。本校には、日本語が得意でない人に対しても、手厚いサポートのシステムがあります。しっかり頑張る人を、先生方が応援します。しかし、日本語が得意でないから、授業や課題をちゃんとやらなくても、成績におまけをしてくれるということは、ありません。

 羽生高校の「学び直しをしたい」という皆さんをサポートするシステムや、困ったとき、苦しいときに相談できるシステムは、一般的な高校よりもはるかに充実しています。しかし、あくまでも高等学校ですから、ひとりひとりへの個別の特別な支援は原則としてありません。高校生として学んでもらいます。  

 さて、高校選びのポイントは、施設、設備、教育システム、学校の雰囲気、先輩の様子など、色々あると思いますが、大事なのは、最後の最後に皆さんが皆さん自身の意思で受検する学校を決めることです。自分にとって良い学校かどうかを見定めて入試に挑戦してほしいと思っています。

 決断をほかの人に任せると、何か嫌なことや上手くいかないことがあったとき、誰かのせいにして逃げてしまいたくなります。自分で決めたという覚悟は、皆さんを成長させてくれます。そして、苦しいときに自分を支える力の一つになってくれます。

 今日は、是非、自分の目で羽生高校をじっくり見て、説明を聴いて、雰囲気を肌で感じてください。そして、皆さん一人ひとりが、より良い高校選びをしていくことができるよう、私は祈っています。 

 さて、新型コロナウイルスのために多くの行事が思うように開催されない中、本校の生徒たちは、文化祭や、体育祭、球技大会などに、限られた条件の中で精一杯取り組んで、素晴らしい盛り上がりを作ってくれました。その行事の中心となって活躍してくれたのは、生徒会役員の皆さんです。頑張っている先輩たちに親切にしてもらった後輩たちが、自分もそんな先輩になりたいと思って、自分を成長させていく、そんな姿が、本校にはあります。皆さんも、そんな先輩たちの後に続いてもらえればいいなあと、私は考えています。

 本校の三つの校訓は「友愛・自立・飛翔」です。皆さんが正門を入ってすぐに、体育館の壁に書いてあったと思います。この校訓にあるように、本校には、生徒の皆さんに成長してもらい、世の中に飛び立ってもらう、「飛翔」のための学びがあります。そして、学習においても、生活においても、自分の希望と意思で選べる多くの「自由」があります。自由と表裏一体の「責任」の大切さを学ぶ機会もあります。選択と決断の積み重ねが、主体的に学ぶ力を育てます。そのようにして、校訓にある「自立」の力を身につけてもらいます。また、そんな学校生活の中で、お互いを認め合い助け合うことのできる力を養う「友愛」も大切な校訓です。

 羽生高校にある、皆さんを支える様々なシステムについて、これから説明があります。よく聞いていただき、有意義な時間にしてもらうことを願いつつ、私からの御挨拶といたします。

全校集会 校長講話(1月7日)

 改めまして、皆さん、おはようございます。そして、明けましておめでとうございます。気持ちの良い返事を聞かせてくれた人、ありがとう。

 昨日は、雪が学校にも積もりましたが、事務室長さんや何人かの先生方が、雪かきをしたり、塩化カルシウムをまいたりして、皆さんが歩きやすいようにしてくれていました。今日、元気な皆さんの顔を見ることができて、嬉しく思います。

 今日は1月7日です。新年の7日までは、「松の内」といって、お正月の松飾りを残しておきます。そして、今日は「七草がゆ」の日です。「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ」の七種類の草をおかゆに入れて食べます。緑の草が伸びていく生命力を分けてもらう、という行事です。昔の人の知恵として、野菜が少ないこの時期の栄養補給、ビタミン補給だったのでしょう。

 さて、「冬休みの間に、本を読んだり、家の手伝いをしたりしましょう」と、12月22日の全校集会で話しましたが、皆さんは、何か心に残るものがありましたか? また、新しい年の初めに、自分なりの目標や、やってみたいことを考えた人も、多かったのではないかと思います。それは、とても大切な、素敵なことです。

 理屈を言えば、12月31日と1月1日との間に、それほど大きな違いは無いでしょう。しかし、私も含めて多くの人は、新しい年に何かを期待し、希望を持ちます。放っておけばだらだらと続いてしまう毎日に区切りを付けて、少しだけでいいから、昨日よりも成長しよう。そんなふうに思うことは、人として尊いことです。

 昨年末のお話では、「自分を誉めてあげて、1年を締めくくりましょう」と言いました。今日は、違うことをいいます。

 今年は、どんな小さなことでもいいから、10年後の自分が『あのときに、ああしておいてよかったなあ』と思ってくれるようなことをやりましょう。逆に言えば、10年後の自分に叱られるようなことや、文句を言われるようなことは、やめましょう。

 皆さんに向けて4月から言い続けている、「いのち」と「時間」と「決まり」の3つを大切にしてほしいということ。これも、皆さんが5年後・10年後・20年後の自分のためにしてあげられる、とても素敵なことです。

 今日は寒いですから、いつもの半分の長さでお話を終わりにしますが、どうか、新型コロナウイルスに十分気をつけて過ごしながらも、10年後の自分に、『あのとき、あんなふうにしてくれてありがとう』と言ってもらえるような、新しい年にしていきましょう。

 

全校集会 校長講話(12月22日)

 皆さん、おはようございます。

 今、挨拶を返してくれた人、ありがとう。挨拶を返してもらえるのは、とても気持ちが良いものですね。

 さて、あと10日後には令和4年、2022年がやってきます。新年を気持ち良く迎えるためにも、一人ひとりが今年の振り返りと締めくくりを、きちんとしておきましょう。

 先ほど、生活体験作文と、書道・美術・ソフトテニス・剣道についての表彰がありました。 誰もが「素晴らしい」と認める、立派な成果です。表彰を受けた皆さんは、自分自身の今年の頑張りに対して、胸を張って誇りを持ってほしいと思います。

 そして、友達の表彰を、一緒に祝い喜んでくれた生徒の皆さん。私は、皆さんも素晴らしいと思います。もちろん、大会で勝ち抜いたり賞を取ったりすることは凄いことです。しかし、自分の成長というものは、他人に表彰されるかどうかで決まるものではありません。負けたらダメなのか、賞を取れなかったらダメなのか、というと、そんなことはありません。自分自身の成長が感じ取れたか。自分自身の積み重ねてきた努力がそこにあったか。そういったことが確かめられたなら、自分で自分を誉めてあげましょう。胸を張って、誇りに思ってあげましょう。

 何年も前のオリンピックでのことですが、銅メダルを取った選手が、その前のオリンピックで取った銀メダルよりも、今日の銅メダルの方がずっと嬉しい、自分を誉めてあげたい、と話していたことがありました。

 皆さんも、どんな小さなことでもいいんです。今まで得意ではなかったことに、挑戦できた、とか、みんなの前で話したり、発表したりすることができた、とか、何となく挨拶ができなかった人に向けて、自分から挨拶することができた、とか。あるいは、いつも怠けてしまっていた授業に、ちゃんと出席して取り組むことができた、とか。そういったことでいいんです。一見小さいようでも、立派なプラスです。人と比べる必要もありません。ひょっとしたら、自分にとっては、大きな心のエネルギーが必要なことだったかもしれません。そうであったなら、自分を誉めてあげて、胸を張って1年を締めくくりましょう。 

 さて、4月からずっと、皆さんには、「いのち」と「時間」と「決まり」の3つを大切にしてほしい、と話し続けています。

 成長するということは、皆さんの命がより良く伸びることです。自分が成長することも、人が成長することも、尊いことです。「いのち」を大切にして、自分の良いところを認めてあげてください。事故や病気の無いよう、人の心を傷つけることのないよう、「いのち」を大切にして過ごしてください。

 そして、残りわずかな今年と、これからやってくる来年も含めて、限られた高校生としての時間を、大切にしてください。また、ルールやマナーなどの決まりを守って、お互いに気持ち良く過ごせるようにしましょう。

 まだまだ新型コロナウイルスの心配は続いています。十分気をつけて過ごしながら、冬休みの間も、本を読んだり、家の手伝いをしたりしましょう。そして、また1月7日に元気な顔を見せてください。

 

翔羽祭(体育祭)開会の挨拶 (11月5日)

 皆さん、おはようございます。素晴らしい天気になりました。爽やかな小春日和。体育祭にふさわしい、気持ちの良い朝です。

 

 「翔羽祭(とびはねさい)」というのは、とても良い名前ですね。皆さんの、若い力の躍動を感じます。 新型コロナウイルス感染予防等による様々な制約の中で、係の先生方や、体育委員をはじめとする生徒の皆さんが中心となって、熱心に、丁寧に準備をして、今日を迎えました。心から感謝いたします。

 

 さて、私は皆さんに、よく「いのち」と「時間」と「きまり」を大切にしてほしいという話をします。こうした行事に一生懸命取り組むことは、皆さんのいのちを輝かせることです。 行事のスムーズな進行に協力することの基本は、時間を守ることです。 トラブル無く、お互いに気持ちよく過ごすためには、きまりを守ることが必要です。今日も、「いのち」と「時間」と「きまり」を大切にして過ごしてください。

 

 さあ、頑張った人ほど、お祭りを楽しむことができます。怪我などの事故の無いよう、また、感染症予防などにも気をつけながら、思いっきり楽しんでください。私も、皆さんのチームワークとフェアプレーの精神が形に表れるような、素晴らしい活躍を楽しみにしています。素敵な一日になるよう祈りつつ、開会の挨拶といたします。

勾玉祭を終えて (10月22日)

 フィナーレ(閉会式)や表彰の場面では話す機会がなかったので、この場を借りて感想めいたものを綴ります。誰かが目にしてくれたら嬉しいです。

 

 生徒の皆さんの取り組みは、たいへん立派なものであったと思います。おだやかであたたかな生徒の皆さんの笑顔がたくさん見られたのも、嬉しいことでした。私自身も、たいへん楽しませてもらいました。飲食に関連する催し物や三密が防げない企画については規制されていましたし、公開も正午までという短いものでしたが、規制を前向きにとらえることで、かえって安易に流れず、よく工夫したことが随所に見て取れる企画が数多くありました。加えて、生徒の皆さんは、先生方の丁寧な指導・支援についても、よく受け止めてくれていました。私は、そんな羽高生の皆さんの校長であることを、誇りに思います。

 残念ながら、本番当日の頑張りで力尽きたのか、表彰や片付けが行われた今日は、昨日よりも人が少なかったようですね。祭りなどの行事は、終わった後の寂しさや名残惜しさなどといった気持ちを味わうことで完結します。また、装飾などに使われた材料も、いわば、楽しい時間を一緒に作ってくれた仲間です。ありがとうという感謝の気持ちを持って、「みんなで」丁寧に片付けてあげましょう。

 今日、片付けに一生懸命取り組んで、きちんと「いつもの学校」に戻してくれた皆さん、ありがとう。校内を一周したら、あんまり綺麗になっているので、まるでドラマか映画のセットのように感じてしまいました。

 頑張った人ほど、心の中に、しっかりとした大きな思い出が残ります。それは、あなたを成長させる糧(かて)となります。昨日も、今日も、良い一日となりました。来週から、また、普段の日々を大切にしていきましょう。

勾玉祭(文化祭)の開会にあたって (10月21日)

 おはようございます。皆さん、頑張りましたね。いよいよ、勾玉祭の当日を迎えました。昇降口には、大きな「まがたまん」が、笑顔で皆さんを迎えています。生徒会の皆さんも、実行委員の皆さんも、それぞれの催し物を準備してきた皆さんも、本当に頑張ってくれて、今日を迎えました。 

 さて、学校は、「わからなかったことが、わかるようになる場所」、「できなかったことが、できるようになる場所」、「つながっていなかった人や物事が、つながるようになる場所」です。

 新型コロナウイルス感染拡大のために、たくさんのことができなくなってしまいました。しかし、生徒の皆さんの頑張りと先生方の御指導のおかげで、「わからなかったこと」や「できないかもしれないと思われていたこと」が、こうして、少しずつ、できるようになってきました。素晴らしいことだと思います。また、この勾玉祭の準備を通じて、人との新しいつながりを強くした人もいることでしょう。これも、素晴らしいことだと思います。

 お祭りなどの行事は、頑張った人に、一番大きな思い出をくれるものです。人を楽しませることが、自分が楽しむことにつながります。頑張った人が、楽しめるよう、祈っています。

 今年の素敵なテーマ、「 飛翔! 満ちる希望! 勾玉祭始動!! 」という言葉のとおり、勾玉祭が始動します。どうぞ、素敵な一日にしてください。

 

後期始業式の講話に代えて(10月4日)

 本校は前期・後期の2期制です。本来でしたら、4日間の秋休みをはさんで後期が始まる10月5日に始業式を行うのですが、今期は始業式を省略して、授業を行いました。

 私たちは先月まで、新型コロナウイルス感染拡大防止のために授業時間を短縮するなどの対策を取ってきました。また、9月には、夏季休業明けの全校集会(1日)、前期終業式(30日)と、生徒の皆さんにお話しする機会が2度ありました。本来、学校は「授業がいのち」です。今回は、授業を少しでも進めることを優先しました。

 生徒の皆さん。日頃から私が口にしている、「いのち」と「時間」と「きまり」を大切に、ということを心のどこかに置いて、後期も努力を重ねてください。疲れたり、悩んだりするようなことがあったら、誰かに相談しましょう。

 学校は、「わからないことを、わかるようにする」場所です。「できないことを、できるようにする」場所です。「お互いを大切にして、良い『つながり』をつくる」場所です。今は、わからないことや、できないことがあるのは、当たり前です。今、人とのつながりをうまく作れないのは、当たり前です。

 少しずつ、一緒に成長しましょう。

前期終業式校長講話(9月30日)

 改めまして、皆さん、おはようございます(こんばんは)。

 今日まで緊急事態宣言期間ということで、9月1日に行った全校集会同様、放送と映像を通じて、皆さんにお話をします。

 始業式に先立って、テニス部、バドミントン部、軽音楽部の皆さんと、生活体験発表会で本校代表となった皆さんへの表彰がありました。新型コロナウイルスのために色々なことが制限されている中で、羽生高校の生徒の皆さんが頑張っている。これは、本当に素晴らしいことです。

 また、昨日と一昨日、勾玉祭に向けたTシャツの販売がありました。生徒会の皆さんは、勾玉祭に向けて、さまざまな準備をしてくれています。そのほかにも、各クラス等でそれぞれ企画している催しに向けて、取り組んでいる人たちがいます。そうした皆さんの姿を見られるのも、とても素敵なことです。

 

 さて、本校は2学期制ですから、今日で前期は終わります。通知表が渡されます。結果が良かった人も、思うような成績が取れなかった人も、その原因を考えてみてください。どうか、成績の数字だけ見て終わりにしないでください。振り返って、何が良かったのか、何が悪かったのかを考えてください。

 人間は完璧ではありませんから、誰にでも、うまくいかないことは山ほどあります。ところが、ちびまる子ちゃんのオープニングテーマ「おどるポンポコリン」の歌詞にも出てくる「えらい人」発明王エジソンは、こんなことを言っています。

 「私は、失敗したことがない。うまくいかない方法を見つけただけだ。」

 負け惜しみにも聞こえますが、歴史上最も成功した人のひとり、エジソンの言葉です。 

 うまくいかなかったとき、何が悪かったのか、どこに問題があったのか、それを考えた人は、次に、同じ間違いをしません。逆に、うまくいったときに、何が良かったのか、ちゃんと考えなかった人の場合、次に同じようなことに取り組んだときの成功する確率は、良くても5分5分でしょう。

 結局のところ、人間が何かを成功させようとするときの近道は、悪いところを直すことです。でも、失敗をしないと、どこが悪いのかわかりません。ということは、人間は、何かを成功させるためには、まず、失敗をしないといけないのかもしれません。

 「失敗は成功の母」という言葉がありますが、それどころではありません。失敗は、成功の必要条件なのです。

 だから、皆さん。失敗したことで、自分を責める必要はありません。なぜそうなったのか、ちゃんと考えないこと、それが最もいけないことです。一度目の失敗は、失敗でも間違いでもありません。それは、次にうまくいくようにするための勉強です。考えるためのヒントをもらったということです。

 きちんと考えることなく、同じ失敗を繰り返してしまうことが、「本当の失敗」なのです。皆さん。色々なことを、ちゃんと考えましょう。それは、成功につながることです。

 

 私は、こうして皆さんに話す機会があるたびに、「いのち」と、「時間」と、「決まり」の三つを大切にしてください、と呼びかけています。大切にするというのは、よく考えるということでもあります。どうぞ、よく考えてください。 

 自分のことだけ考えていると、考えが狭くなってしまいます。自分にできることで、誰かを助けたり、家の人の手伝いをしたりしてみましょう。考えの幅が広がります。

 誰かを助けたり手伝ったりするのは難しいなあ、という人は、出会った人に挨拶をしてみましょう。そうすると、ほんの少しだけ、挨拶した相手のことを考えられるようになります。

 自分の考えだけでは足りないこともあります。そんなときのために、本を読みましょう。考えが広がります。考えが深くなります。

 困ったときは誰かに相談しましょう。助けを求めましょう。助けて、と言えるのは、自分がまだ諦めていないことを示すことかもしれません。

 これから、短い秋休みをはさんで、後期が始まります。この休みの間に何かを考えた人は、考えた分だけ、少し成長します。皆さんが何かをきちんと考えると、考えた分だけ、今年度の後半が、少し良い日々になります。

 どうぞ、考えを深める時間を作ってください。

 以上です。

 

夏季休業明け全校集会校長講話(9月1日)

 改めまして、皆さん、おはようございます(こんばんは)。

 この夏休み、大きな事故があったという報告も受けていません。今日も、廊下などで皆さんの元気な顔を見ることができ、たいへん嬉しく思っているところです。デルタ株と呼ばれる、新しいタイプの新型コロナウイルスの流行が激しくなっているため、このように放送で全校集会を行っています。

 皆さんは、この夏休み、どのように過ごしましたか? 私は、夏休みに入る前の日の全校集会で、皆さんに向けて「感染症予防に気をつけながら、家の手伝いもしましょう、本も読みましょう」と呼びかけましたが、面白い本には出会えましたか? 誰かの役に立つような、お手伝いができましたか?

 また、そのときの話の中で、挨拶の大切さについても、触れましたね。さっきの私の挨拶は、放送を通じてのものでしたが、皆さんは、この夏休みの間に、いったい、何人の人に挨拶をすることができたでしょうか? 私は、「挨拶は、人と人との間を近くするものです」という話をしましたが、そう考えると、皆さんは、この夏、ことばに出した挨拶の数だけ、自分と誰かの間にある心の距離を近づけることができたわけです。おめでとう。

 私も、この夏、とても嬉しい挨拶をもらいました。夏休み中に学校に来て、生徒会の活動をしたり部活動の練習をしたりしている、生徒の皆さんからの挨拶です。

 そして、先ほどは、全国大会で活躍した陸上競技部、テニス部、剣道部の皆さんからも、 放送で挨拶をしてもらいました。嬉しかったです。先日、ほかの高校の校長先生方と会う機会がありましたが、羽生高校は、部活動や生徒会活動が盛んで、生徒が頑張っている学校です、と、胸を張って話してきました。

 この放送を聞いている生徒の皆さんの中には、この3つの部活動の人たちと話をしたことがない人もいるかもしれません。しかし、今日、この放送の挨拶を聞いたことで、あなたの世界は少しだけ広がりました。素敵なことです。

  さて、私は、繰り返し皆さんに「いのち」と「時間」と「決まり」の3つを大切にしてほしいと言ってきました。その、大切な3つのことに関わるお話です。

 去年の春、新型コロナウイルスのために学校が3ヶ月ストップしたとき、「大変なことが起きてしまった」と私も思いましたが、今は、あのときよりもはるかに大変なことになっています。

 生徒の皆さんの中には、あまり実感がわかない人がいるかもしれません。しかし、新型コロナウイルスの流行を押さえるために私たち一人一人が行動していかないと、すぐに人の命にかかわるような状況になってきています。

 今、救急車が病人や怪我人を運ぼうとしても、コロナの患者さんで病院がいっぱいで、運ぶことができないということが、たびたび起きています。また、入院する患者さんのための部屋も、ベッドも、足りなくなっています。

 つまり、皆さん自身や、皆さんの大切な人たちが、病気や怪我で入院や手術をしようと しても、それができなくなる。いつもなら簡単に助かるはずの命が、受け入れ先の病院が 見つからないために、助からなくなってしまう。そんなことが起きはじめています。他人事ではありません。

 では、そんな状況を改善するために、私たちは何をすれば良いのか。何ができるのか。 実は簡単です。いくつかの簡単な「決まり」を守ってください。マスクをすること。ちゃんと鼻まで隠すこと。できれば、ウレタン製でなく不織布のマスクです。そして、マスクを取ったらしゃべらない。人混みは避ける。手を洗う。実行しましょう。これらを守ることで、多くの命が救えるのです。これは、命を大切にする行動のひとつです。

 また、学校生活も、いつ感染状況悪化のために授業ができなくなるかわかりません。毎日の学校生活を、授業の一つ一つを、大事にしましょう。これが、時間を大切にすることです。

 夏休みが終わっても、命と、時間と、決まりを大切にしてほしいということに、変わりはありません。どうか、この3つを大切にして過ごしてください。

 以上です。

 

【テニス部】全国大会結果報告(8月19日)

 令和3年8月8日(日)~10日(火)に、千葉県長生郡白子町サニーテニスコートで開催された全国高等学校定時制通信制体育大会(ソフトテニス)に埼玉県代表として出場したテニス部の皆さんが、顧問の先生とともに報告に来てくれました。たいへん嬉しいことです。

 

 上西 啓士 君、平田 素輝 君は、2人とも男子団体戦・個人戦に出場しました。団体では全国5位、個人では2人ともベスト32と、仲良く素晴らしい成績を残してくれました。また、鈴木 瑞季 さんは、女子団体戦の埼玉県チームの一員として出場し、全国3位の栄冠を勝ち取り、上記の写真のとおり、メダルを披露してくれました。

 学校は、保護者や地域の皆様に支えられながら、生徒と教職員でつくりあげるものです。頑張っている生徒たちがいると、私たち教職員は、心に元気をもらえます。元気をもらえた教職員は、生徒たちの成長のために、さらに力を発揮します。誰かが頑張ることは、誰かとつながって、広がっていくものです。

【剣道部】全国大会結果報告(8月5日)

 令和3年8月4日(水)、奈良県奈良市のロートアリーナ奈良(中央体育館)で開催された令和3年度全国高等学校定時制通信制体育大会 第52回剣道大会に、埼玉県代表として出場した 末原 サムエル 君が、顧問の先生方と一緒に報告に来てくれました。緊急事態宣言のため応援に行くことができなかった校長としても、たいへん嬉しいことでした。

 試合は午前に個人戦、午後に団体戦でした。末原君は、個人戦1回戦で富山県代表の選手に勝利した後、2回戦で神奈川県の代表(午後の団体戦優勝チームの主将)と対戦し惜敗。埼玉県チームとして出場した男子団体戦では、千葉・大阪との予選リーグで1勝1敗となり、残念ながらトーナメントに進むことができなかったそうです。

 しかし、高校に入学してから剣道を始めた末原君は、本人の努力と先生方の御指導によって、幼い頃から剣道を学んできた他県の代表選手たちと立派に渡り合う力を身に付けました。そのことが何よりも嬉しく感じられました。10月の大会に向けて、また頑張っていくと、意気込みを語ってくれました。

 なお、本校の伯耆田先生が監督として埼玉県女子チームを団体優勝に導いてきたことを、併せて御報告いたします。

 

夏季休業前 全校集会 校長講話(7月27日)

 

 今、いい声で私に挨拶を返してくれた人、ありがとう。嬉しいです。

 難しい漢字ですが、挨拶の「挨」の字も「拶」の字も「人に近づく」という意味があります。挨拶は、人と人との間を近くするものです。 

 

 10年以上前、私が進路指導の仕事を担当していたとき、ある企業の採用担当の方から、こんなふうに言われたことがあります。

「そりゃ、勉強ができないよりも、できる方が良いけど。たとえ成績が悪くても、仕事はちゃんと教えるから、それをきちんと覚えてくれればいいよ。でもね、挨拶や返事ができないのは、マズい。挨拶ができない人は、仕事を教えても覚えてくれないし、仕事仲間も、その人を助けてくれなくなっちゃう。」

ということでした。 

 人には性格があり、得意・不得意もありますから、今、上手に挨拶ができなくても、大丈夫です。学校は、『今できないことを、これからできるように頑張るための場所』ですから、挨拶をするのが苦手な人は、卒業までに(できれば、就職などの面接試験を受ける前までに)、何とかなるよう練習すればいいんです。うまくできたり、できなかったりを繰り返して、練習しましょう。

 

 さて、この4月、皆さんに初めてお話をしたとき、私は、「いのち」と「時間」と「決まり」の3つを大切にしてほしい、と言いました。

 成長するということは、皆さんの大切な「いのち」をより良く伸ばすことです。だから、人が成長するのを邪魔する「いじめ」や「からかい」は、許されないことです。

 そして、高校生として過ごしている今、大切な時間を、自分をより良く成長させるために使ってほしい。目の前のやるべきことを大切にして取り組んでほしい。それが、時間を大切にすることなのだ、と言いました。

 また、すべての決まりには、それが作られた理由があります。

 決まりを破ることは、決して格好いいことなんかじゃない。ルールやマナーなどの決まりごとを破ると、結局は、誰かを傷つけたり、自分が傷ついたり、不便になってしまったり、長い目で見て自分が損をしたりします。決まりごとの、その向こう側にある理由を、考えてから行動しましょう。 

 いずれにせよ、この「いのち」と「時間」と「決まり」の3つを大切にしてほしい、ということです。

 

 今年度も、4月から今日までずっと、新型コロナウイルスの感染拡大から皆さんの安全を守るために、保健室の先生方をはじめ、すべての先生方が、皆さんの「いのち」のために、誠実に、丁寧に、細やかな対応をしてくれていました。

 皆さんが、高校生としての時間を大切にして、自分の命をより良く成長させるように、 すべての先生方が、一つ一つの授業を大切に実施してきました。

 また、皆さんが生き生きと取り組めるよう、行事の準備も行っています。

 苦しくなったり困ってしまったりした生徒の皆さんのためにも、相談体制を整えています。

 卒業後の将来のことも考え、一所懸命、進路のサポートをしています。

 保護者の皆様と協力しつつ、学校外のさまざまな機関の方々とも連携しています。

 皆さんの目に触れないところで、学校のさまざまな施設・設備を整備したり、学校の計画を立てたりしている方もいます。

 また、皆さんに決まりの大切さを理解してもらうため、ときには厳しい指導もしています。

 

 だから、皆さん。長い夏休みの間も、「いのち」と、「時間」と、「決まり」を大切にして、過ごしてください。

 感染症予防に気をつけながら、家の手伝いもしましょう。本も読みましょう。

 そして、9月1日に、また、元気な顔を見せてください。(夜間部の皆さんは、一緒に、美味しい給食を食べましょう。)

 

壮行会「激励の言葉」

 

 全国大会に出場する、陸上競技部・テニス部・剣道部の皆さん、おめでとうございます。

 先ほど、それぞれの部活動を代表する生徒の皆さんが、お話をしてくれました。私は本当に嬉しく思いました。もちろん、全国大会で活躍してくれる皆さんがいることが嬉しいのですが、それにも増して、代表の皆さんがとてもいい話をしてくれたことが、嬉しかったのです。同様に、聞いている生徒の皆さんが素晴らしい態度で、その話をしっかり受け止めてくれていることが伝わってきて、とても嬉しかったのです。

 

 さて、陸上競技部、テニス部、剣道部の皆さんには、全国大会という晴れの舞台で、「思いっきり自分の力を発揮する喜び」と、「同じ競技で頑張っている全国の仲間たちと、高いレベルで競い合う楽しさ」の二つを、心ゆくまで味わってきてもらいたいと思います。

 

 折しも、今、オリンピックが行われています。メダルを取ってインタビューを受ける選手の多くが、「この場を作ってくれた人たちに対する感謝」や、「自分たちを支えてくれた人に対する感謝」を述べています。

 また、高校野球においては、部員の中で新型コロナウイルスの感染者が複数出たことで、今年の春の選抜で全国優勝した東海大相模高校が出場を辞退し、神奈川県大会の準々決勝を棄権するといったニュースもありました。

 

 できなかったかもしれないオリンピック。また、できなくなってしまった甲子園への挑戦。こうしたことを考えると、一つの大会がきちんと行われることや、それに参加できることは、決して当たり前のことではない、ということがわかります。たいへん貴重な機会なのだということが、改めてわかります。

 

 多くの人が、大会に出場する皆さんに、安心して全力を出してもらえるように、働いています。多くの人が、皆さんの健康と安全のために、働いています。それらはすべて、皆さんを応援する気持ちの表れです。その応援を感じながら、このチャンスを思いっきり楽しんできてください。これを、私からの激励の言葉といたします。

 

3年次生保護者の皆様へ(令和3年6月1日 修学旅行延期についての通知より)

 3年次生保護者 様 

 

   修学旅行の延期について

 

 麦秋の候、ますますの御清栄とお喜び申し上げます。また、本校の教育活動に日頃から御理解と御協力を賜り、ありがとうございます。

 さて、修学旅行実施について4月22日にお知らせして以来、準備を重ねてきたところでございますが、5月末の状況の変化に伴い、日程を延期いたします。皆様には、直前になってからのお知らせで御迷惑をおかけしますこと、心よりお詫び申し上げます。

 本校では、生徒の安全を確保し、保護者の皆様の御理解を得て、訪問先の地元の皆様に配慮しながら修学旅行の計画を進めて参りました。しかし、御存知のように、国の緊急事態宣言が北海道知事の要請により延長されました。また、今まで札幌周辺以外は落ち着いていた感染拡大状況も、5月下旬に悪化しました。先週、宿泊予定地の函館市では新規感染者数が大きく増加し、もう一つの宿泊予定地ニセコ町でも、観光施設・公共施設のほとんどが休館または町民のみ利用可となっています。この状況では、お子様の安全を確保し保護者の皆様の御理解を得ることは難しいと判断いたしました。現在、9月・10月を日程の候補として調整を始めております。

 楽しみに計画を進めてきていた生徒の皆さんにも、心配しながらも御理解を示してくださっていた保護者の皆様にも、急なお知らせとなりましたこと、重ねてお詫び申し上げます。今後の予定は下記のとおりです。そのほかのことについては、それぞれ決まり次第、お知らせいたします。本来ならば説明の場を設けるべきところではありますが、迅速にお知らせをしなければならないところでもあり、紙面にて御容赦いただきたく、お願い申し上げます。

 

   記

 

1 修学旅行について

 日程を延期します。候補日は令和3年9月・10月とします。なお、延期した日程に近接する行事の予定については、変更されることもあります。これらについては、決定次第、御連絡申し上げます。

2 令和3年6月9日(水)・10日(木)の予定について

 平常授業です。生徒の皆さんはいつもどおり登校してください。

3 令和3年6月11日(金)の予定について

 年次の教職員を中心に対応します。詳細は、後ほど生徒の皆さんにお知らせします。

 

令和3年度 第51回入学式 式辞(令和3年4月8日)

 今年の桜は例年よりも早く咲きましたが、今も、少ないながら遅咲きの桜が若葉に混じって伸びやかな姿を見せています。このような佳き日に、令和3年度埼玉県立羽生高等学校第51回入学式を挙行できますことを、心から嬉しく思っております。

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、さまざまな制約がある中で、この式の実現に尽力してくださったすべての方に、感謝申し上げます。

 

 さて、先ほど呼名された68名に、入学を許可いたしました。

 新入生の皆さん、入学おめでとうございます。中学校までの義務教育を終えるにあたって、自分なりの形で高校への進学を選び、決断して、皆さんはここにいます。不安や迷いもあったでしょう。それを乗り越えて、皆さんはここにいます。胸を張ってください。これからは、羽生高校の生徒として一緒に学んでいきます。私たちは、皆さんを歓迎します。皆さんのこれからの努力を、応援します。

 そして、入学生の皆さんを支えてこられた保護者の皆様、おめでとうございます。また、この場にはいない、今まで新入生たちを応援してくださった方々にも、心よりお祝いを申し上げます。

 創立74年目を迎える本校では、多くの卒業生が、ここで学んだことや体験したことを生かし、社会のあらゆる分野で活躍し、世の中を支えています。

 在学中の先輩の中にも、つらい体験を乗り越えて、ここで素晴らしい活躍をしている人が大勢います。

 新入生の皆さんも、羽生高校での学習と生活を、自分の成長のために生かしていってください。

 

 では、皆さんに、これから大切にしてもらいたいもの、守ってもらいたいものについて、三つお話をします。

 一つ目は、命、人の命です。

 皆さんも、私も、大切な「命」を持っています。どんな人にも、命は一つしかありません。平等です。この最も大切な宝は、何があっても守らなければなりません。

 自分の命を大事にする、ということは、自分の人生を大切にして、自分を成長させるということです。自分の命をより良く使うということです。

 そして、他人の命も大事にしてください。誰かをいじめたり、誰かが頑張って成長しようとしているのを邪魔したり、何かに真剣に取り組んでいる人をからかったりするのは、他人の命を粗末にすることです。そんな人は自分自身のことも大切にできません。命の価値は平等ですから、自分の命も、他人の命も、大切にしてください。

 さて、大切にしてもらいたい二つ目のものは、時間です。

 どんなに立派な人の時間も、そうでない人の時間も、同じように過ぎていきます。その、誰にでも平等に与えられた時間を、大切にしてください。授業でも、部活動でも、そのとき取り組んでいる、目の前にある、そのことを大切にすることが、時間を大事にすることです。

 三つ目は、決まりです。決まりを大切にしてください。

 すべての決まりには、理由があります。その決まりを守ると、便利になったり、得をしたりします。あるいは、その決まりを守ると、誰かを傷つけずに済んだり、自分が傷つかずに済んだりします。

 若い頃には、決まりを破ることが、格好良く見えてしまうことがあります。しかし、それは錯覚です。なぜ、その決まりがあるのか、理由を考えるようにしてください。

 もしも、その決まりがあるために、かえって不便な人や傷つく人を増やしてしまっているのなら、正しい手続きで決まりを変えましょう。決まりを破ったり壊したりする力ではなくて、誰かと協力してもっと良い決まりをつくる力、決まりを変える力を手に入れましょう。そんな力を養いましょう。

 命と、時間と、決まりを大切にしてください。これが、守ってほしい三つのことです。

 

 さて、保護者の皆様、本校は「単位制」という、生徒一人一人の希望や生活のリズムに合わせることのできる柔軟な教育システムをとっています。

 しかし、これは大きな自由がある反面、大きな責任を自分自身で負わなければならないシステムでもあります。卒業するためには、自分自身をしっかり管理できることが必要です。

 保護者の皆様、どうか、本校の教育方針について御理解いただき、学校と連携しながら、お子様の健やかな成長と卒業を実現するための支援をしていただきたく存じます。我々教職員も、全力で生徒の皆さんの努力を支援いたします。

 

 最後に、入学生の皆さん、どうか、保護者の皆様をはじめとする、皆さんが高校で学ぶことができるように道を拓いてくれた人達に感謝してください。

 そして、今度は皆さんが、どんな小さなことでも良いですから、誰かのために道を拓いてあげられるような力を、この羽生高校で身につけて卒業してください。皆さんが実りある高校生活を送り、大きく成長することを祈念し、式辞といたします。

令和3年度前期始業式(令和3年4月8日)校長講話

 ほとんどの皆さんには、「はじめまして」ですね。

 この4月から、校長として皆さんと一緒に過ごします、新井康之です。

 令和3年度の始まりにあたって、いくつか、皆さんに話をします。

 

 さて、皆さんは、羽生高校の「校訓」を知っていますか。

 校訓というのは、生徒の皆さんに、こんなことを大切にしてほしい、とか、こんな人になってほしい、ということを、短い言葉で表したものです。体育館の外側に、学校名や本校のマスコット「まがたまん」のイラストと一緒に三つの言葉が書いてありますね。それが校訓です。今日は、このことについて話します。

 

 一つ目の言葉は「友愛」。

 辞書では、兄弟や友人の間の親しみとされていますが、もっと言えば、互いを思いやる心です。

 嫌なことを言いますが、世の中には、嬉しいことや楽しいこと、明るいことがたくさんあるのと同じように、悲しいことやつらいこと、暗いこともたくさんあります。ときには、人間は、悲しくてつらくて、真っ暗な中に一人ぼっちでいるような気持になって、どうしようもなくなってしまうことがあります。

 しかし、そんな時に誰かが、そのつらい気持ちでいる人への思いやりを、言葉や、態度や、行いで示してくれたら、どうでしょうか。真っ暗な気持ちの中に閉じこもっている人にとって、思いやりを示してくれたその人は、光そのものです。植物が光を浴びて成長するように、その人は、もう一度立ち上がって伸びていくことができます。

 人間は、そういう意味で、光になることができるのです。

 友愛という言葉には、皆さんに、世界のどんな小さな隅っこでもいいから、誰かを光で照らしてあげられるような人になってほしいという願いが込められていると、私は考えています。

 

 二つ目は「自立」です。

 辞書には、独り立ちすること、他人の力を借りずに生きていくこと、などと書いてありますが、辞書にある意味より、もっと皆さんの人生に関わることでお話しをします。

 人間は、集団で社会をつくって生きていく動物です。決して、何から何まで一人だけで生きていくことなどできません。

 私は、このように考えています。本当に自立して生きるというのは、誰かに何かをしてあげる代わりに、自分のできないことを誰かに助けてもらえるような生き方が、上手にできるようになることだ、と。

 自立とは、何かを通じて困っている人を助けてあげる力を身につけるのと同時に、自分が困ったときに、きちんとした形で誰かに助けを求めることのできる力を身につけることなのだ、と私は思っています。

  校訓の「自立」とは、そのように誰かを助けたり、誰かに助けられたりしながら、社会人として生きていけるようになってほしいという願いが込められている言葉なのだと私は解釈します。

 

 三つ目の言葉は「飛翔」です。

 もちろん、空中を翔けるように飛ぶことなのですが、まさか、皆さんに「空を飛べ!」と言っているわけではないですよね。

 確かに、将来、まるで空を飛ぶように素敵な活躍をしてほしいという願いもあるのでしょう。しかし、私はあえて「天にも昇る心地」などと表現される「幸せな気持ち」のことについて、お話しします。

 まず、不思議なことに人間は、誰かに何かをしてもらっているだけでは、どんなに贅沢をしても、良いものを手に入れても、満足しないのだそうです。他人に喜ばせてもらっているだけでは、心の底からの本当の喜びを手に入れることはできないのだそうです。

 では、人は、どんな時に幸せな気持ちになれるのか。

 実は、人間は、自分の力で誰かに喜んでもらえたときや、誰かが幸せになるお手伝いができたとき、また、誰かを助けたり、誰かの役に立ったりすることができたと手応えを感じたときに、心の底から満足感や幸福感を感じることができるのだそうです。きっと、天にも昇るような気持ちへの扉も、そこにあるのでしょう。

 

 さあ、それでは、皆さんが高校生として、そんな幸せな気持ちにたどり着く力をつけるための方法です。何を頑張れば良いのか。どう頑張ればよいのか。

 まず、時間を大切にすること。

 授業でも、部活動でも、今、目の前にあることに集中して取り組んでみてください。それが、限られた高校生としての時間を大切にすることなのです。

 次に、自分の命も、他人の命も、大切にすること。

 自分の成長を大事にすることと同時に、真剣に頑張る人をからかったり、誰かをいじめたりしないこと。それが、一人ひとりの伸びる命を大切にすることです。

 そして、決まりを大切にすること。

 それは、何につけても正しい方法で行う、ということです。幸せになるための魔法のような近道は、ありません。あるように見えるのは、だいたい偽物です。正しい方法で、ルールやエチケットなどの決まりごとを大切にすることが、結局は一番の近道です。

 さて、今日は、私たちの学校の校訓である三つの言葉について考えました。そして、幸せになるために、命と時間と決まりの三つを大切にしてほしいというお話をしました。今日の私の話はここまでです。

 

令和2年度終業式(3月22日)校長講話 ー夢をかなえる秘訣ー

 皆さん、おはようございます。

 3月12日は卒業式でした。緊急事態宣言下でしたので、在校生の皆さんに参列してもらえなかったのは残念でしたが、代表して生徒会長が心のこもった送辞を述べてくれました。卒業生は立派な態度で式に臨み、堂々と卒業していきました。皆さんにも是非先輩達に続いてほしいと願っています。

 17日には4月から皆さんの後輩となる入学許可候補者の説明会がありました。こちらは、まだどことなく中学生の面影を残し、初々しい様子でした。生徒の皆さんが高校生活をとおして大人になることを改めて実感した二つの行事でした。

 そして、皆さんは高校生として、それぞれ道の途中にあるわけですが、大丈夫、感染症にも自分にも負けず学校に通い続けることができた皆さんも、この一年間で一人ひとりがしっかり成長しています。

 

 さて、今年度最後の終業式の今日は新年度に向けて「夢をかなえる秘訣」に関する話をします。

 

 「夢の国」と言ったらどこですか。そう、ディズニーランドです。ミッキーマウスの生みの親であり、夢の国をつくることを実現したその人、ウォルト・ディズニーの名前も聞いたことがあるでしょう。彼は今から100年以上前、1901年に両親の間に四番目の男の子として生まれました。仕事の失敗続きだった父親は子供たちにつらく当たり、三人の兄は家出、ウォルトも小学生時代毎朝3時半起きで新聞配達をしていたこともよく知られています。しかし、子どもの頃から友達が笑ってくれる漫画を描くのが大好きだったウォルトは、夢を持つことの力を信じ、夢に関する言葉も多く残しています。

 

   夢をかなえる秘訣は、4つの「C」に集約される。それは、「好奇心」「自信」「勇気」そして

   「継続」である。

 

 ここで言う「C」はそれぞれの言葉の英語の頭文字のことです。英語は後で調べてみてください。

 

 なるほどと思います。好奇心をもって始めたことは、面白いので誰でも夢中になって取り組みます。すると自然に上達し、結果が出るとますます面白くなっていく。没頭して取り組むうちにできる自分に自信がついてきて、さらにモチベーション高く取り組む好循環が生まれます。

 これがずっとうまく回ってくれればいいのでしょうが、なかなかそうはいきません。伸び悩んだり、結果がついてこなかったりということは皆さんにも経験があるだろうと思います。後から振り返れば、上達して次のステージに上ろうとしている時だった、あれは試練の時だった、ということが多いのですが、壁にぶつかると、できない自分がいるわけですから、どうしても自信も失いがちです。

 すると、自分には向いてなかったとか、他にやりたいことがあるとか諦める理由を見つけ始めてしまったりもします。自信がないと次の挑戦をするには非常に勇気がいるので逃げ出したくなるのですね。

 ここが大きな分かれ道です。自信を失ってわずかばかりになった勇気に火をともして自分自身を再び燃え立たせることができるか否か。覚悟が問われます。

 それでもなんとか乗り越えた、うまくいくようになったと思ったら、また一段高いところの問題にぶつかって、の繰り返し。夢を実現するには相当なエネルギーが必要です。

 それでも、挑戦しては乗り越えるサイクルを回しながら、継続して取り組んでいると、気づけばいつの間にか遠く高いところまでたどり着いている。夢がかない成長した自分に出会えます。

 

 高校生活も同じだろうと思います。

 小学生に始まった皆さんの学校生活は順風満帆ではなかったかもしれません。それでも、この羽生高校で学び直し、新しい自分に出会えることを思い描いて入学した皆さんです。時に弱気が顔を出しても自分に負けるな!どうしても苦しいときは自分の殻に逃げ込まず、先生や友達、家族、誰でもいいから助けを求めることも忘れないでください。エネルギーを補給して、また勇気を奮い立たせましょう。

 

 ウォルト・ディズニーはこんな言葉も残しています。

 

   過去の出来事に傷つけられることもあるだろう。でも私が思うに、そこから逃げ出すことも出来

   るが、そこから学ぶことも出来る。

 

 新しい年度に向かう春休みは、これまでのことをいい意味でリセットし、これからのことを考えるいい機会です。新年度も積極的にトライできるよう、こころと体をしっかり整えて春休みを過ごしてください。春です。新しいスタートです。笑顔でがんばりましょう。

 

第51回卒業証書授与式 式辞 ー学びのその先へー

 春です。

 卒業生の皆さん、卒業おめでとう。

 この日まで、お子様を育て、支えてこられた保護者の皆様にも心からのお祝いと敬意を表します。35名の卒業生は、幾多の葛藤を乗り越えて、強さと優しさを身につけ、巣立ちの時を迎えました。  

 

 高校生活を終えて皆さんの胸にはどんな思いが湧いてくるのでしょう。

    特に、最終年度となった今年度は、予期せぬ新型感染症との闘いに明け暮れることになりました。臨時休業に始まり、高校生活を彩る学校行事も残念ながら思い描いたとおりにはいきませんでした。しかし、皆さんは立派だった。

 

 9月、修学旅行中止の決断を三年生の皆さんに伝えた日、一人ひとりの真剣な眼差しは、忘れることができません。あの日、皆さんはどれだけの感情と言葉をのみ込んで静かに受け止めてくれたのでしょう。

 10月、多くの制約がある中で、考え、行動し、後輩たちをリードして途絶えさせることなく第五十二回勾玉祭をやり遂げた皆さん。創立以来、本校生に受け継がれた、困難に屈しない羽高魂、伝統の力を皆さんが見事に体現してくれました。

 11月、翔羽祭ではじけた笑顔は爽やかで本当に楽しい一日でした。選手の活躍もさることながら、あの日の立役者は、走り回って運営を助けてくれた四年生でした。夜間部の球技大会の後、全員で跳んだ縄跳びは、夜間部生徒の団結を一層堅固なものにしました。

 

 本日、勾玉祭のモザイクアートをこの式場に置きました。保護者の皆様、見てやってください。モザイクの一つ一つは全校生徒一人ひとりが撮影した写真です。違う個性をもつ一人ひとりの心が動いた瞬間を切り取った写真から、新たにこのモザイクアートが完成しました。

 

 昨日、3月11日、未曾有の被害をもたらした東日本大震災から十年を数えました。それ以降もこの国に生きる私たちは、地震や台風による水害など次々に襲いかかる困難や深い悲しみ、苦しみに直面することになりました。そして今、世界中で新型コロナウイルスとの闘いが続いています。社会の変化のスピードは増すばかりで、世界には矛盾や葛藤が渦巻いています。予測困難な未来を担っていく皆さんは、今後も様々な課題に直面するでしょう。

 

 苦しいときには思い出してください。

 困難と思える状況の中で、どうしたいのか、何ができるのかを考え抜き、人々の幸せに向かって対話を重ね、互いの違いを乗り越えて、知恵と力を共有し、補い合うことができたなら、このモザイクアートのように新たな価値と希望を生み出すことができることを。

 

 さあ、飛翔の時です。学びのその先へ!ここでつかんだ学びの種をもって広い世界へ羽ばたこうとする皆さんが、やがて、未来の社会のそこここで希望の花を咲かせる人になることを期待します。

 

 感謝を忘れず、勇気と誇りをもって進んでください。皆さんの未来に幸あれと祈ります。卒業おめでとう。

 

                             令和3年3月12日

                           埼玉県立羽生高等学校長 鈴木 久代

 

冬季休業明け校長講話(1月7日)ー今を生ききるー

 明けましておめでとうございます。

 静かに年が明けました。昨年は新型感染症との闘いに明け暮れた一年でしたが、皆さんの協力のお陰で無事に年を越すことができました。今日もこうして、元気な顔を見ることができて嬉しく思います。しかし、本日、緊急事態宣言再発令の予定となっており、厳しい状況が続いています。学校は始業時刻の繰り下げや短縮授業を実施することとしましたが、皆さん一人一人の意識と行動が大事です。引き続き「健康観察、手洗い、マスクの着用、三密を避ける」ことを徹底し、感染防止に協力してください。

 さて、年の初めの全校集会にあたり、今日は、「今を生ききる」ということについて話をしたいと思います。

 感染症の拡大が続く中で、今はがまんの時といわれています。もちろん外出や会食などがまんが必要なことはあります。勾玉祭も模擬店などはできませんでした。修学旅行も遠足もできませんでした。しかし、がまんだけの毎日なのかと改めて考えてみると、こうした日々の中にも、心が動くこと、喜び、嬉しさや楽しさ、幸せはあると思うのです。そして、「今を生ききる」ことの大事さを改めて感じています。

 私は、運転中ラジオを聞くのが好きです。昨日は出勤途中のラジオから、洋画家 野見山 暁治 さんの100歳記念の個展が開催されるという話が流れてきて心をつかまれました。100歳にして現役、100歳ですから関東大震災以前に生まれ、太平洋戦争も経験したはずです。

 驚きながら耳を傾けてみると、中学時代の先生の影響で絵を描くことが好きになった野見山さんは、17歳で福岡から上京、入学した東京美術学校油絵科3年のときに太平洋戦争が始まったそうです。兵役のため22歳で繰り上げ卒業、陸軍へ入隊し、満州に送られたとのことでした。向こう側に銃口が見え、死を覚悟したと言います。しかし、肺の持病が悪化して、福岡の傷痍軍人療養所で終戦を迎えることになります。

 終戦から3年後、やっと東京へ戻ると、フランス政府の留学生募集の記事を偶然見つけます。セザンヌやゴッホの絵がどうしても見たくて試験を受けて合格し、31歳でパリに渡ります。一ヶ月の船旅で地中海に入り、明かりが遠目に見えたとき、涙がボロボロ出たと言います。美術学校の生徒でパリに行けた人は誰もいない。何人もの戦死者が出て、例外なくみんなパリに憧れて死んでいった。嬉し涙というよりは慚愧に堪えなかった。自分だけが幸福でいいのか。許してくれ、という思いだったそうです。

 12年間のパリ生活で西洋画制作に没頭するうち、不思議と東洋画に心が惹かれるようになり、1964年、東京オリンピックの年に帰国します。その後は、大学で指導に携わりながら精力的に絵の制作と執筆活動もするようになりました。また、1976年から戦没画学生の遺族をたどり、作品を集める活動に協力、これが長野県上田市の戦没画学生慰霊美術館「無言館」につながります。

 どんな絵を描く方なのか気になって、ネットでも調べてみました。すると、そこに現れたのはダイナミックで奔放、エネルギーに圧倒されるような絵でした。年齢を重ねるごとに迫力が増しているように感じます。野見山さんは言います。「限られた画面から広い宇宙観のようなものが出てくる、手品のような絵が描きたい」「自分の課題があるから描く。どうすればめざす表現に辿りつけるのか、毎日、毎日が実験です。だから絵にはこれでおしまいというのはありませんね」「描くことは生きること」「興味あることに食い下がれ」。描くことで、常に今を生ききる野見山さんの飽くなき探求心に驚かされます。

 感染症が拡大する中で、幸せな未来のために今はがまんということもあるかもしれません。でも、人生は一期一会。大切な自分の人生の今を生ききることで今ある幸せに気づくことができる。幸せは私たち一人一人、自分の中にあります。幸せはその人の心のありようだから……。皆さんは、何を自分の課題とし、クリアするためにどう行動しますか。今年も皆さんのトライに期待します。笑顔で頑張りましょう。

 

冬季休業前校長講話(12月25日)ー想像力を働かせて行動しようー

 皆さん、おはようございます。今日は朝一番の大掃除、ご苦労様でした。学校中がさっぱりして良い年を迎えられそうです。年末の大掃除は厄を払う意味もあると言いますから、是非、自分の家もきれいにして、良い年を迎えてほしいと思います。

 さて、年末を迎え、今年も新聞各紙に日本10大ニュースが掲載されました。1位はやはり「新型コロナの感染拡大、緊急事態宣言」、関連して流行語大賞も「3密」、今年の漢字も「密」と、新型感染症に関するもの一色の感がありますが、中には、明るいニュースもありました。「藤井聡太七段の最年少タイトル」や「『鬼滅の刃 無限列車編』の興行収入最速100億円」などです。映画は皆さんの中にも観に行った人がいるのではないでしょうか?

 感染症の拡大は、皆さんの学校生活にも影響を与えることになりましたが、皆さん一人一人にはどんな一年だったでしょう?臨時休業をはじめ行事の中止や縮小など残念なこともありましたが、昨日までの球技大会には楽しく参加できましたか?制約がある厳しい状況ではありましたが、工夫してできたこと、努力したこと、楽しかったことに目を向けて、皆さん一人一人が、頑張った自分、成長した自分を、自分で認めてあげられるところがあれば嬉しく思います。

 感染が拡大している中で冬休みを迎えるにあたり、今日は、私自身の情けない体験を踏まえ、「想像力を働かせて行動しよう」ということについて話をしたいと思います。

 それは、会議があって出張した11月のある金曜日、夕方のことです。駅の構内は帰りを急ぐ人たちで混雑していました。第3波と言われ、感染が拡大してきたこともありましたので、私も少しでも早く電車に乗りたいと思い、周囲の人の流れに乗って足早に乗換駅の改札を抜けようとしたときでした。オレンジ色のマスクをつけた方が緊迫した様子で辺りを見回している姿が目に飛び込んできました。「何かお困りですか?」と声をかけながら近づいてみると、その方の足元にうずくまっている人の姿があります。オレンジのマスクの方が「駅員さんに知らせないと」とおっしゃるので、はじめて利用する駅に不案内な私は、具合の悪い方に付き添う役割を引き受け、オレンジのマスクの方が駅員さんを呼びに行ってくれました。「大丈夫ですか」と声をかけると、あげられた顔は、血の気がなく、まさに顔面蒼白でした。私もしゃがんで励ましながら、しばらくすると、オレンジのマスクの方が駅員さんと戻ってきてくれました。駅員さんに後の対応をお願いし、オレンジのマスクの方と「ありがとうございました」と声を掛け合い、また帰りを急ぐ人の波に乗りました。たったこれだけのことです。

 白状します。ほっとして、しばらくすると、電車の中で私は言いようのない不安に襲われたのです。「もしかして、うずくまっていた人が感染者だったらどうしよう」「電車に乗ってしまったけれど、感染を拡大することにならないだろうか」「週明け、学校に行けるだろうか」「高齢の母と暮らしているけれど大丈夫だろうか」……と同時に、恐怖や不安とも闘いながら昼夜を問わず懸命に働いてくださっている医療従事者の方々の姿がまざまざと頭の中に立ち上がったのです。

 12月21日に医師会から医療緊急事態宣言が出されました。22日、看護協会からも、看護師等の離職があった病院が15.4%に上ったとする調査結果が公表されました。感染症の指定病院や受け入れ協力医療機関に絞ると、20%を超える離職があったそうです。看護師へのアンケートには、「家族や親族が心ない言葉を言われた」「保育園に来ないでくださいと言われた」「我が子に『お母さんの病院にはコロナがいるの』と聞かれた」「美容院の予約を断られた」などの回答があったそうです。皆さんは、どう思いますか?

 学校は冬休みに入りますが、皆さん想像してみてください。誰かの命を守るために、感染の不安だけでなく偏見、差別とも闘いながら懸命に働く方がいらっしゃることを。収束が見えない中で、まず私たちができることは、医師や看護師の方にこれ以上の負担をおかけすることがないよう、コロナに限らず病気や怪我をしないよう気をつけることだろうと思います。家庭にあっても、生活リズムを崩さず、感染防止対策を徹底し、想像力を働かせた行動をお願いします。新しい年を元気に迎えましょう。