校長講話等
「人の繋がり」
「人の繋がり」
本校は昭和23年に不動岡高校羽生分校として開校し、昭和42年の分離独立、46年の県立移管等を経て、今年度創立69年目を迎えました。
この間、約5千名の卒業生を送り出していますが、同窓会組織は「学友会」という名称で、毎年6月に総会を開催しています。今年も、分校で学ばれた方と一緒に、最近卒業した若い世代が参加してくれました。一階の廊下に部活動の記録が掲示してあり、夏の定通全国大会参加記念の写真もあります。その写真の中の卒業生達です。
世代を越えた「学友会」の交流を拝見しながら、私は人の繋がりを実感していました。
人は見えないところでも繋がっています。現在の生徒の皆さんも、同世代の仲間だけでなく、卒業生した先輩、これから後輩となる世代、過去から現在、未来に渡り、羽生高校に関係のある全ての人達の輪の中にいるのです。
皆さん、人の繋がりを意識しましょう。それは、今の自分と今の生活を大切にすることであり、同時に他人を大切にすることでもあります。
今年度も文化祭に歴代の卒業アルバムの展示を計画しています。たくさんの卒業生や保護者の皆様に御覧いただければ幸甚です。
『まがたま』 第75号より
未来を拓く「学び」プロジェクト後期公開授業
未来を拓く「学び」プロジェクト後期公開授業
埼玉県教育委員会では、生徒一人ひとりの主体的な学びを実現するため、平成22年度から東京大学の大学発教育支援コンソーシアム推進機構(CoREF)と連携し、「知識構成型ジグソー法」の手法を用いた協調学習による授業づくりに取り組んできました。平成24年度からは「未来を拓く『学び』推進事業」、そして平成27年度から平成31年度まで「未来を拓く『学び』プロジェクト」として研究・実践を継続し、発展させています。
本校でも、昨年度この「未来を拓く『学び』プロジェクト」事業開発校の指定を受け、9名の研究開発員の先生が中心となって新しい授業づくりに取り組んでいます。10月5日(水)には、公開授業並びに研究協議も予定されています。生徒自らが主体的に学び、思考力・判断力・表現力の伸長を図り、深い学びへ近づこうとする様子を多少なりとも感じていただけると思っています。是非、羽生高校にお越しください。多数の先生方に御覧いただければ幸甚です。
また、このプロジェクトには、「協調学習」に加え、アクティブラーニングの年間指導計画への位置づけに関する研究や、「協調学習」と「反転学習」の融合、「協調学習」における「ICT活用」、開発教材のデータベース化の推進等も含まれています。本校でも、アクティブラーニング用教材の共有や「反転学習」研修会への参加等、積極的にこのプロジェクトを活用しています。
未来はどうなるかわかりません。しかし、「拓く」という文字には、知恵や努力によって創造し工夫することで現在の殻を破り、未来の可能性を拡げるという意味が込められています。私達教育に携わるものは、生徒達の明るい未来を「拓く」ことを常に忘れずにいたいものです。
「生命の大切さ」
「全校集会講話」
~生命の大切さ~
夏休みも終わり、今日から授業が再開します。8月の登校日は学年ごとでしたので、全体で顔を合わせるのは7月以来になります。久しぶりの学校という人も多いでしょう。報告を含めて、初めに少し夏休みを振り返ってみましょう。
まず、陸上部、テニス部、柔道部、剣道部、軽音楽部が全国大会に出場しました。出場するだけでも大変なことですが、入賞、あるいは大会で自己記録を大幅に更新するなど大変活躍してくれました。逆に、思うような結果が残せずに悔し涙を流した人もいました。どんな結果にせよ、参加した人達にとって全国大会での経験は大きな財産となるでしょう。今年の夏の時間、汗や涙はきっと今後の人生の糧となるはずです。
これは、全国大会だけでなく、校内で汗を流していた皆さんにも当てはまります。部活動や進路、補習等のために登校していた皆さん。何度か皆さんの真剣な姿を見せてもらいました。また、生徒会の皆さんは、合宿をして勾玉祭の準備に取り組んでくれました。
そして、学校から離れて頑張った人もいるはずです。自分しか分からない頑張り、それも大切なことです。皆さん自身の夏休みを振り返ってみましょう。
次に、皆さんにお願いを含めて別の話をします。
夏休みの間、「他人を傷つける」という行為が原因となって、皆さんと近い年代の人達が命を落とすという痛ましい事件が複数ありました。
残念なことですが、人は無意識のうちに他人を傷つけてしまうことがあります。しかし、少なくとも意図的に他人を傷つけることはあってはなりません。「~だから」と暴力やいじめの理由をつけることがありますが、どんな理由であれ許される行為ではないのです。
もう一つのお願いは、もし悩んでいることがあれば、決して一人では抱え込まないということです。「助けてもらう力」のことは以前お話ししました。皆さんの周囲には、皆さんが気づかない「助けてくれる力」が必ず存在します。他人に悩みを告げることは、決して恥ずかしいことではありませんし、迷惑なことでもありません。人生の中で、今「助けてもらう」ことにより、いつか「他人を助ける」ことができるようになります。そして、何より、皆さんは一人ひとり価値ある存在であり、援助を受けるに値するのです。
生命は受け継がれ、そして大切に受け継いでいくもの。皆さんの生命の中には、たくさんの思いが込められています。自分の生命を大切にするとともに、他人の存在を尊重することのできる人になって欲しいと願っています。
(一部改)
「選挙権の行使」
「選挙権の行使」
羽生市の選挙管理委員会からポスターが届きました。これは、選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法施行後初めての国政選挙において、10代の選挙権行使の啓発ために作成されたものです。本校の生徒もポスターの中から投票を呼びかけています。
選挙権を持つということは、政治に参加する権利を持つということです。そして選挙権を行使するということは、自分の考えを社会に伝えようとする行為です。そのためには、社会や地域の課題に一人一人が関心を持ち、問題意識を持たなければなりません。「自分一人が投票したところで何も変わらない」とか「良くわからないから棄権する」のではなく、不十分かもしれませんが、自分の力で考え、参加することが大切なのです。
これは選挙だけでなく、日々の生活の中でも培うべき大切な力です。他者の意見に耳を傾け、しかし決して他人任せにせず、できるだけ課題を多面的・多角的に捉え、責任を持って関与していく。未来を担っていく若い世代の意識こそが社会を支える原動力となるはずです。
ポスターには期日前投票についても触れられています。投票日当日に投票できない人は、是非この制度を利用してください。
「季節感じる心」
「移り気」な紫陽花が庭を彩る季節となりました。雨の滴に揺れる紫陽花は、この季節に優しい色合いを添え、心をなごませてくれます。
さて、6月になると必ず想い出す言葉があります。オックスフォード大学出版局から刊行されている英語辞書の中に、ポケット・オックスフォード・ディクショナリー(The Pocket Oxford Dictionary of Current English 略称 POD )という有名な辞書があります。「ポケット」という名が付く通り小型ですが、豊富な情報量とともに何とも言えない魅力があり、一時代を築いた辞書です。
そのPODの第5版(1969)では、6月( June )をこう定義しています。
June, n. A MONTH associated with roses & midsummer
(薔薇と真夏を連想させる月)
6月は薔薇の最も美しい月で、庭先には薔薇が咲き誇り、英国各地の薔薇園も最盛期となります。また、通例、英国の夏は5,6、7月とされ、シェイクスピア(William Shakespeare)の『真夏の夜の夢』( A Midsummer Night's Dream )も6月の話です。
私はこの季節感が溢れる定義が大好きでした。単なる「1年の6番目の月」 ( the sixth month of the year )ではない6月。景色が浮かび、香りが漂うような気がしました。それは、忙しい日常に季節を忘れがちになる自分を立ち止まらせてくれるものでした。
回りくどい話になりました。日常に季節を感じることは、今を大切にすることでもあり、慌ただしさの中で見失いがちになる自分の心を見つめなおすことでもあります。余裕を持って、毎年訪れる季節を心と身体で味わいましょう。ボタン一つで画面に情報を積み上げることをやめて、仮想世界にはない空気を思いっきり吸いましょう。
少し歩みを止めて雨の滴を肌で感じ、紫陽花の「移り気」を楽しんでみませんか。
(教壇に立っていた頃、この POD の定義を良く生徒達に話しました。6月になると一緒に想い出します。生徒達はこの定義を覚えているでしょうか。)
「出会い」
「出会い」
それは、4月1日に赴任し、4月8日の入学式を迎えるまでの間の出来事でした。
夕方の6時半くらいのことで、辺りはすでに薄暗くなっていました。職員玄関を出て数歩、自動車の走り去る雑然とした音が溢れる中、その音は私の耳に流れ込んできました。周囲の状況とは一つだけ異質な、美しい世界を構築しようする意図のある旋律。私は自分の耳を疑いました。あり得ないことだと思ったからです。しかし、その美しい歌声とピアノの音は確かに聞こえてきます。
どこから聞こえるのか。じっと耳を澄ませました。数秒後、私はその方向をつきとめ、右頭上を見上げました。校舎4階の開いた窓から流れ出ていたのです。校舎内にいたときは全く聞こえなかったのに。私は、暫し立ちつくし、数分間じっと聞いていました。なんという素晴らしい贈り物。一瞬、緊張も疲れも忘れ、幸福感に包まれました。そして、このまさに天からもらった美しい歌との出会いに感謝しました。
その次の日、或いは2,3日経ってからでしょうか。私はもう一度この歌の贈り物をいただき、偶然の出会いに再び感謝したのです。
出会いは、私たちの周りに満ち溢れています。学校に向かう通学路に咲く花に、今日読んだ本の一節に、ふと耳にした音楽に、何気ない日常に、ほんの少しかもしれませんが、人生を幸せにする出会いが隠されています。
「出会いで大切なことは、気がつかない出会いに気がつくこと。どうすれば出会えるかということではなくて、出会っているのに気がつかないのを、どう気がつくかということである。」作家の中谷彰宏さんはそう言っています。
出会いの季節です。新しい人たち、新しい環境、新しい日常。心を開いて、周りを見渡しましょう。出会いは意識から生まれます。私たちを、ほんの少しかもしれませんが、幸福にしてくれる出会いに気づきましょう。出会いによって人は育ち、人生を豊かにしていくのです。
私も羽生高校での、すべての出会いを意識し、大切にしていきます。
(数週間後、歌の送り主にお礼を言うことができました。)
羽高だより 第110号より
「助けてもらう力」 第46回入学式 式辞
「助けてもらう力」
式 辞
三寒四温の言葉の通りに春はやってきます。寒さと暖かさを繰り返す中で、季節は徐々にしかし確実に変わり、陽ざしは心地よく、柔らかな新芽の緑と花々に彩られる今日の季節が巡って参りました。
本日ここに、多数の御来賓の方々に御臨席いただき、埼玉県立羽生高等学校、第46回入学式を挙行できますことは、この上ない喜びであり、心から感謝を申し上げます。
ただいま呼名され、入学を許可された生徒の皆さん、入学おめでとうございます。皆さんは本日から、羽生高校の生徒として本校で学んでいくことになります。頑張ってください。
保護者の皆様、お子様の入学、本当におめでとうございます。心からお祝い申し上げます。教職員一同、全力でお子様の教育に当たらせていただきます。
本校は昭和23年に設立され、今年で69年目を迎える学校であります。本校を巣立った多くの卒業生は、社会のあらゆる分野で活躍しています。また、平成10年より単位制を導入し、歴史と伝統の中に新しい学びの精神を併せ持つ学校へと生まれ変わりました。生徒一人一人は、自らの興味関心や進路実現に応じて、自分だけの時間割を作り、主体的に学ぶことができます。新入生の皆さんも、羽生高校生になったことに自信と誇りを持ち、自分の夢や目標の実現を目指し、是非、意欲ある高校生活を送ってください。
さて、ここで、是非皆さんに身につけていただきたい力についてお話しします。
1つ目は、人に助けてもらう力です。これは、他人の力を当てにすることでも、努力をしなくて良いということでもありません。皆さんが、夢や目標を実現するためには、皆さんの努力とともに、時に、周りの人の支援は、なくてはならないものです。周りの人の助けは、じっとしていて得られるものではありません。自分の努力を示し、支援して欲しいことを発信することも必要になります。
助けてもらうことは決して恥ずかしいことではありません。今、助けられたなら、これからどこかで誰かを助けてください。人を助けるとともに、人から助けられることが大切なのです。
2つ目は人から教わる力です。教わる力には、実にたくさんのことが含まれます。皆さんは若い。若さは、それだけで多くのことを吸収できる力があります。
しかし、目の前にどんなに素晴らしいものがあっても、心ここにあらずであれば、学ぶことはできません。教わる力は、皆さんが一日一日を、一瞬一瞬を大切にすることで培われていきます。
3つめは、人に感謝し、人を認める力です。羽生高校の校訓の一つに「友愛」があります。「友愛」とは、友達と励まし合い、支え合い、思いやり協力する心のことです。
ここに集まっている皆さんは、当然ながら、一人一人異なります。自分とは異なる存在を認めること。そこからスタートしましょう。それが「友愛」に通じます。
そして、皆さん、今この場にいることに対して、皆さんの力になってくれた人達に感謝してください。保護者の方に感謝してください。学ぶ心と机があること、それだけで十分幸福なのです。人に感謝する心は、やり遂げようとする決意にも繋がっていきます。人生には、様々な悩み、失敗や挫折はつきものです。悩みや、失敗、挫折こそが皆さんの人間性を豊かにしていきます。
三寒四温の後に春が訪れるように、寒さや温かさを経験して、皆さんは羽生高校の門をくぐりました。ここが皆さんの高校です。ここで3つの力を養い、未来を切り開いてください。
新入生の皆さん、「人生の時計」の話を聞いたことがありますか。これは、自分が今人生のどこにいるのかを、1日24時間の時間で考えるものです。その計算は自分の年齢を3割るだけの大変簡単なものです。
今、15歳の皆さんは、3で割ると5となります。人生の午前5時にいることになります。まだ目を覚ましていない人がほとんどでしょうか。皆さんの人生はこれから、色々な可能性のある時間が待っています。
保護者の皆様、本日から、お子様をお預かりします。本校は「単位制」という、生徒一人一人の希望や生活のリズムに合わせることのできる柔軟な教育システムをとっています。しかし、自由度が大きい反面、自己責任も負わなければならないシステムでもあります。卒業するためには、自分自身をしっかり管理できる人間となることが不可欠なのです。
保護者の皆様には、本校の教育方針をご理解いただき、学校と密接な連携をとりながらお子様の健やかな成長と卒業に向けた支援をしていただきたいと存じます。
終わりに、本日入学された皆さんが実りある高校生活を送り、大きく成長して卒業することを祈念し、式辞といたします。
平成28年4月8日
埼玉県立羽生高等学校長 田島 昭彦
「友愛」 平成28年度始業式講話より
「友愛」
いよいよ、新しい年度が始まります。本日午後には、入学式があり、新入生を迎えます。
年度の初めに当たり、二つほど皆さんにお話をします。
一つ目は、羽生高校の校訓の一つ、「友愛」という言葉についてです。「友愛」とは、友達と励まし合い、支え合い、思いやり協力する心のことです。そして「友愛」の根底にあるのは、「人を認める心」です。
ここに集まっている皆さんは、当然ながら、一人ひとり異なります。他者の存在と人格を認め、そこから相手の立場を考え、行動すること。「友愛」とは、お互いに尊重し合い、安心のできる人間関係に他なりません。
しかし私たちには、他人を「いじめたい」、「差別したい」という気持ちが抜きがたく存在することも事実です。これは、本来人間の心にある暗黒の部分です。では、どうしたら良いか。第一歩が「人を認める」ことであり、「友愛」の人間関係を築くことなのです。
皆さん、羽生高校の生徒として、もう一度、校訓に込められた意味を考えてください。「友愛」は校訓の最初にあります。「友愛」に続いて「自立」があり、それに続いて「飛翔」があるのです。
校訓の「友愛」。友達と励まし合い、支え合い、思いやり協力すること。原点に立ち返り、一人一人がこの言葉を大切にしてください。
(中略)
人生の「飛翔」に備え、心を拡げ、前を向きましょう。今年一年が、皆さんの「飛翔」にとって良い準備の年となるよう祈っています。